
日本電信電話(NTT)は,メガヘルツ帯の機械振動をレーザー光により自在に励起・制御できるオプトメカニカル素子を用いて複数の同期状態の生成に成功し,それらの間を瞬時に遷移させる技術を実証した(ニュースリリース)。
独立な2つのメトロノームを1つの土台の上に置くと,バラバラだったリズムがやがて揃う同期現象は,複数のニューロンが同じ興奮状態となる様子に類似点が多く,同じ仕組みとして説明できると考えられている。人工素子を用いて同期現象を操ることができれば,人工ニューラルネットワークの実現に繋がる。
一方,脳内の神経回路では,多くのニューロンがその状態を時々刻々と変化させて情報処理を行なうが,メトロノームのように単一の同期状態に安定化するだけでは情報を扱えない。同期する振動子(メトロノーム)の間に機能を持たせるには,複数の同期状態を生み出し,それらの間を所望のタイミングで遷移させる手法が重要。
しかし,既存の同期状態に対する制御技術では,振動子間の相互作用(土台)が素子の形によって固定されており,複数の同期状態を生み出す相互作用の種類や,同期/非同期を切り替える相互作用の強さを所望のタイミングで制御するのは難しい。
同社は,髪の毛程度の細さのガラスファイバ上にくびれを導入したオプトメカニカル素子を作製。この素子のくびれに挟まれたボトル形状の部分では,この部分が膨張・収縮する「機械振動」と,表面を光が全反射で周回する「光共振」が影響しあう。
このボトル形状を調整することで,異なる周波数を持つ2つの機械振動を同時に利用できるため,光と相互作用する2つの機械振動子を1つの微小構造に備えたオプトメカニカル素子を実現した。
振動子の同期には,振動子間をつなぐ結合(土台)が必要。今回,2つの機械振動子の周波数差で強度変調した光を用いて振動子間に結合を生み出す手法を確立し,周波数差のばらつきも約1000倍以上抑えた。
同期している2つの機械振動子の相互関係が,振動一回分あるいは整数分の一の単位でずれる「位相スリップ」は,異なる同期状態の遷移を引き起こせる。今回,同期状態を多重化する特殊な結合効果を光で誘起し,その強さと周波数を時間的に変化させ,位相スリップを所望のタイミングで発現させる手法を確立した。
実験では,メガヘルツ帯の機械振動をレーザー光により自在に励起・制御できるオプトメカニカル素子で,困難だった複数の同期状態の生成に成功し,それらの間を瞬時に遷移させる技術を実証。これにより,同社では多様な相互作用が生み出す高度な「機能」を搭載した生体模倣技術が期待できるとしている。



