香川大ら,シリコン光集積回路で量子分類器を検証

香川大学,慶應義塾大学,情報通信研究機構(NICT)は,シリコン光集積回路を用いた,ユニバーサルな量子分類器の原理検証実験に成功した(ニュースリリース)。

機械学習の手法を量子回路へ適用した量子機械学習アルゴリズムにおいて,量子分類器を実装する手法の一つに,ニューラルネットワークのモデルを用いたものがある。これは量子回路を並列的に準備し,入力データの情報を分散的に記憶させる手法。

一方で,この手法を拡張するには,複数の量子回路とキュービットを並列的に準備する必要があるため,その実装には理論的にも実験的にも難しいという課題があった。

このような背景の下,2020年にData Reuploadingと呼ばれる手法を利用することで,一つのキュービットで量子分類器が実現可能であることが理論的に示された。この手法は,量子回路を複数のレイヤーに分割し,それぞれの量子回路へ逐次的に入力データの情報を記憶させる手法。

特に,この手法では量子回路のレイヤー数を増やすことで漸近的にユニバーサルな分類器を実現することが可能。一方で,この手法の光量子回路への適用方法については明らかではなく,光量子回路を使った実装は報告されていなかった。

研究グループは,光干渉計を多段に組合わせることで,プログラマブルな光集積量子回路を実装し,Data Reuploadingの手法を使って光量子回路を学習させた。

今回,光量子回路へ入力される光子数が平均して2個程度になるまでレーザー光強度を減衰させ,実験を行なった。まず,初段の回路を使って任意の量子状態を準備し,準備した量子状態を使って後段の光量子回路を学習させた。

原理検証実験を行なうにあたっては,2次元の入力データを想定し,2次元のデータで指定される点が円の内側にあれば負,円の外側にあれば正といった具合に,分類を行なった。今回,200個の教師データを使って量子回路を学習し,学習させた回路を使って任意の入力データを分類した。その結果,約94%の正答率でデータを分類することに成功した。

研究グループは,Data Reuploadingの手法を光量子回路へ適用し,シリコン光集積回路を使ってユニバーサルな量子分類器を実装することに成功した。レーザー光を弱めた疑似光子源を利用したが,今後は量子もつれ光子を利用することで,さらなる分類器の発展が期待される。

近年,シリコンフォトニクスを利用した量子情報処理分野は急速に発展している。研究グループは今回,レーザー光を弱めた疑似光子源を利用したが,今後は量子もつれ光子を利用することで、さらなる分類器の発展が期待されるとしている。

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