名古屋大学,農業・食品産業技術総合研究機構,理化学研究所,米ミシシッピー大学,米ペンシルバニア州立大学は,葉肉細胞で光合成によって合成された糖(ショ糖)が葉肉メッセンジャーとして,気孔を構成する孔辺細胞において気孔開口のエンジンの働きをする細胞膜プロトンポンプの活性化と気孔閉鎖を誘導する陰イオンチャネルの不活性化を引き起こし,気孔開口を誘導することを明らかにした(ニュースリリース)。
植物は,太陽光に含まれる青色光と赤色光に応答して気孔を開口し,ガス交換を行なうことが知られている。これまでの研究により,青色光による気孔開口は,青色光受容体フォトトロピンにより青色光が受容され,細胞膜プロトンポンプを活性化し,気孔開口が誘導されることが明らかとなっていたが,赤色光による気孔開口の分子機構の詳細は未解明だった。
研究グループは,ショ糖が葉肉メッセンジャーとして機能しているかどうか,さらに細胞膜プロトンポンプがこれに関与するかを調べるため,遺伝学的実験に用いるモデル植物シロイヌナズナを用いて気孔開口実験を行なった。
シロイヌナズナの葉から単離した表皮に外部からショ糖を与えたところ,0.4mMと1mMショ糖が有意に気孔開口を誘導することから,ショ糖が葉肉メッセンジャーとして機能していることが明らかとなった。
さらに,孔辺細胞における主要な細胞膜プロトンポンプであるAHA1欠損変異体においては,ショ糖による気孔開口が抑制されることもわかり,ショ糖による気孔開口には細胞膜プロトンポンプが関与することが示唆された。
次に,1mMショ糖の孔辺細胞の細胞膜プロトンポンプのリン酸化レベルへの影響を調べた結果,30分程度でリン酸化レベルが上昇することが明らかとなった。さらに,気孔閉鎖を誘導する孔辺細胞における陰イオンチャネル活性へのショ糖の影響を調べた結果,1mMと3mMショ糖処理により,陰イオンチャネル活性が有意に低下することが明らかとなった。
葉に赤色光が照射されると,葉肉細胞において光合成が始まり,その結果,ショ糖が生合成される。生合成されたショ糖の一部は,アポプラスト経路を通じて維管束の篩管に運ばれ,植物体全体に栄養分として輸送される。
同時に,ショ糖は葉肉メッセンジャーとして孔辺細胞に作用し,細胞膜プロトンポンプの活性化と陰イオンチャネルの不活性化を引き起こし,気孔開口を誘導することで,光合成に必要な二酸化炭素の取込みを促進しているということが明らかとなった。
研究グループは,この研究で明らかとなった気孔開口の分子機構を基盤として,今後,気孔開度を制御した植物の作出などが期待されるとしている。




