広島大学,独アルベルト・ルートヴィヒ大学,埼玉大学は,DNAと生体内に存在するフラビン色素の間でブルーライトを当てた時に起こる反応が,市販の磁気治療器より弱い弱磁場の影響を受けることを示した(ニュースリリース)。
クリプトクロムとよばれる光受容タンパク質は渡り鳥などの生体磁気コンパスとして働き,地磁気の方向を感知しているという仮説が有力視されている。
そのメカニズムは,クリプトクロム中でブルーライトを吸収する色素フラビンアデニンジヌクレオチが光により励起されたとき,近くに存在するアミノ酸のトリプトファンとの間で電子移動反応が起こり,その結果生じるラジカル対のために,磁場による反応効率の差として検出できると推定されている。
一方で,DNAの酸化損傷が,元来は紫外線吸収でのみ起こるはずが,フラビン色素を介して可視光領域(ブルーライト)でも起こることが報告されていた。その推定上の初期中間体として,DNA塩基中で最も酸化され易いグアニンのGラジカルカチオンが考えられている。DNAのG塩基とフラビン色素の組み合わせで起こる反応に対して,弱い磁場の影響はこれまで着目されていなかった。
タンパク質のクリプトクロムが微弱磁場を感受するメカニズムは,ブルーライト励起による電子移動反応によって同時に形成されるフラビンアデニンジヌクレオチドラジカルとトリプトファンラジカルからなるスピン相関ラジカル対によって媒介されることが示唆されている。
この研究では,フラビンを連結した1本鎖DNAおよび2重鎖DNAオリゴマーを用い,ブルーライト励起による電子移動反応によってフラビンラジカルとグアニンラジカルからなる長寿命のスピン相関ラジカル対が形成されることを時間分解電子スピン共鳴分光法によって直接観測できた。
過渡吸収分光法とその磁場効果の反応機構評価によって,クリプトクロムにおいては1重状態の前駆体を介したラジカル対生成が報告されているのとは対照的に,この研究のフラビン連結DNAオリゴマーにおいては3重状態の前駆体を介したラジカル対生成が同定された。マイクロ秒の寿命を持ち,室温でも大きな磁場効果をもつフラビン連結DNAオリゴマーのラジカル対の発見は,生物の磁気感受の理解につながると期待されている。
研究グループは,この研究結果は,生物がもつ感覚の理解,生活環境下における光や磁場が健康や老化などに与える影響への理解につながるとしている。




