北大ら,青色光カットグラスの睡眠への好影響を確認

著者: 梅村 舞香

北海道大学と東海光学ホールディングスは,国内では検証が十分実施されていなかった市販のブルーライトカットグラスがメラトニン分泌(睡眠ホルモン)に与える影響を医学的に確認した(ニュースリリース)。

近年では,ブルーライトを発するデジタル機器を使用する際の眼の疲労対策として多くのブルーライトカットグラスが製造されている。しかし,日本人を対象に市販のブルーライトカットグラスが夜間のメラトニン分泌に与える影響を医学的に検証した研究は実施されていなかった。

今回の研究では,眼の異常・障害のない20歳から31歳の男女7名を対象に以下の実験を行なった。実験では,実験室内の明るさを5 lx以下に設定した低照度条件,白色LEDを用いて約2,000 lxに設定した高照度条件,そして,高照度条件下でブルーライトカットグラスを装着して過ごすブルーライトカット条件,三つの条件を設定した。

この研究で使用したブルーライトカットグラスは,オレンジ色で,500nm以下の波長の光を100%遮断し,51%の光透過率をもつレンズを使用した。

メラトニン濃度を測定するための唾液採取は,午後8時から午後11時までは1時間間隔で,午後11時30分から午前1時までは30分間隔で実施した。実験終了後,唾液中のメラトニン濃度を免疫学的測定法(ELISA法)により定量した。

今回の研究では,実験中のメラトニン分泌量について,メラトニン分泌量の経時変化,メラトニン分泌総量の指標である濃度曲線下面積(AUC),そして,高照度条件とブルーライトカット条件における実験終了時のメラトニン分泌量を低照度条件に対するパーセント値として表したメラトニン抑制率を算出した。

唾液中メラトニン濃度は,低照度条件下では午後9時頃から徐々に増加し,実験終了時刻となる午前
1時に最高値を示す経時変化を示したが,高照度条件では低い分泌量となり光照射によるメラトニ
ンの抑制がみられた。

一方,ブルーライトカット条件では,高照度条件に比べ高い濃度で推移していた。そして,唾液中メラトニン濃度のAUCは,低照度条件とブルーライトカット条件は高照度条件と比較して統計学的有意に高い値を示した。また,メラトニン抑制率は,高照度条件に比較して統計学的に有意に低い値を示した。

研究グループは,この研究の成果により,短波長光を遮断することが可能なブルーライトカットグラスを装用することは,ブルーライトを含むLED照明下においても光によるメラトニンの抑制を緩和し,夜間のブルーライトにより生じる生物時計の乱れや睡眠障害といった様々な健康問題の予防にも応用することが期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 広島大ら,DNAの光磁気感知のメカニズムを提唱

    広島大学,独アルベルト・ルートヴィヒ大学,埼玉大学は,DNAと生体内に存在するフラビン色素の間でブルーライトを当てた時に起こる反応が,市販の磁気治療器より弱い弱磁場の影響を受けることを示した(ニュースリリース)。 クリプ…

    2025.07.24
  • 筑波大,光により睡眠を誘導する薬物の開発に成功

    筑波大学の研究グループは,光によりアデノシンA2A受容体の感受性を高める薬物を開発し,マウスの側坐核選択的に光を照射することで睡眠を人為的にリモート誘導することに成功した(ニュースリリース)。 脳の側坐核は意欲行動や睡眠…

    2024.05.22
  • OISTら,タコの動的睡眠の性質を8Kで明らかに

    沖縄科学技術大学院大学(OIST)と米ワシントン大学は,眠っていながら突然活動的になったり,体色が変化したりする,動的睡眠段階にあるタコ(ソデフリダコ)の脳活動や体色模様を詳細に調べ,それらが覚醒時の神経活動や体色模様と…

    2023.06.29
  • 2022年スリープテック市場,前年比133.3%の60億円

    矢野経済研究所は,国内の睡眠関連ビジネス市場を調査し,関連する製品およびサービスの動向,参入企業の事業展開,今後の方向性などを明らかにした(ニュースリリース)。 それによると,スリープテックとはSleep(睡眠)とTec…

    2022.10.25
  • トーヨーカラー,青色光カット剤でOLED長寿命化

    トーヨーカラーは,ブルーライトから有機EL素子を保護することで,有機ELディスプレーの劣化を抑制できることを実証し,同社が開発したブルーライトカット剤を用いて380~420nmの波長をカットすることで,有機ELディスプレ…

    2022.07.28
  • 都市大,健康維持につながる室内照明を検証

    東京都市大学の研究グループは,照明環境が生体リズムや睡眠の質に及ぼす影響について検証・考察を行ない,室内照明(照度・色温度)を自然光の変化に合わせて調節することが健康維持につながることを明らかにした(ニュースリリース)。…

    2021.04.27
  • ニデック,夜間運転で使用できる防眩レンズ発売

    ニデックは,デジタル染色技術を使用した,夜間運転時や路上でも使用できる,夜の活動時に適した夜用グラスレンズ「ナイトアシスト475」を発売した(ニュースリリース)。 この製品は,可視光の中で紫外線に近い(380~500nm…

    2020.07.21
  • トライテラス,内視鏡室向けブルーライトを開発

    トライテラスは,内視鏡室向け補助照明「terasuline wide medical(テラスラインワイドメディカル)」を発売した(製品ページ)。 近年,内視鏡を使用する医療の現場では,内視鏡モニターの視認性の向上を目的に…

    2020.07.16

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア