OISTら,タコの動的睡眠の性質を8Kで明らかに

沖縄科学技術大学院大学(OIST)と米ワシントン大学は,眠っていながら突然活動的になったり,体色が変化したりする,動的睡眠段階にあるタコ(ソデフリダコ)の脳活動や体色模様を詳細に調べ,それらが覚醒時の神経活動や体色模様とよく類似していることを明らかにした(ニュースリリース)。

研究グループは,この活動的な睡眠段階にあるタコが本当に眠っているか調べるために物理的な刺激を与えた。その結果,静的睡眠・動的睡眠どちらの段階でも,覚醒時よりも強い刺激を与えなければ反応がみられなかった。

また,タコの睡眠を妨げたり,動的睡眠段階の途中で睡眠を中断させたりすると,その後に動的睡眠段階に入るタイミングが早まり,頻度も増した。 このような睡眠不足を補償するような行動は,タコが適切に機能するうえで動的睡眠段階が不可欠であることを裏付けるものだという。

さらに,覚醒時と睡眠時のタコの脳活動を調査したところ,静的睡眠段階において過渡的におこる特徴的な脳波が観測された。これは,ノンレム睡眠中の哺乳類の脳にみられる「睡眠紡錘波」という波形によく似ている。

この波形は記憶の固定に役立っていると考えられている。研究グループは,開発した顕微鏡を用いて,タコの脳の中でも学習や記憶と関連する領域に睡眠紡錘波が発生していることを突き止めた。このことから,睡眠紡錘波様の脳波は人間の脳と同様の機能を持っている可能性が示された。

研究では,タコはほぼ1時間に1回,1分程度の動的睡眠段階に入ることが確認された。このとき,タコの脳活動では,人間のレム睡眠と同様に,覚醒時の脳活動と非常によく似ていた。

研究グループはさらに,覚醒時と睡眠時のタコの体色模様の変化を8Kの超高解像度で撮影して解析を行なった。タコは覚醒時,皮膚にある無数の小さな色素細胞を利用して膨大な種類の体色模様を作り出す。研究では動的睡眠の間,タコの体色模様は覚醒時に見られるのと同じ模様を次々に示した。

動的睡眠状態と覚醒状態が似ている理由の一つには,覚醒時に上手く擬態行動を取れるようにするため,睡眠中に体色変化を練習しているか,あるいは単に色素細胞を維持するために行なっているという説がある。

他にも,覚醒時に狩りをしたり,捕食者から隠れたりする体験を睡眠中に再現して学習しており,それぞれの体験に応じた体色模様を再現しているのではないかとする説もある。つまり,夢を見るのと同じような現象が起きている可能性があり,体色模様の変化から睡眠中の脳活動を視覚的に読み取ることができるということになる。

研究グループは今後さらに調査を進めていきたいとしている。

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