東大ら,新窒化物半導体ヘテロ接合の電子散乱を解明

東京大学,住友電気工業は,新規窒化物半導体ヘテロ接合における二次元電子ガスの散乱機構を解明した(ニュースリリース)。

窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN)は,バンドギャップが大きく,強い分極,強誘電性を有しており,高周波・高出力なGaN高電子移動度トランジスタ(GaN HEMT)の新規バリア層として注目を集めている。しかし,これまでScAlN/GaNヘテロ接合における二次元電子ガス(2DEG)は,高密度に誘起されるものの,高い移動度が得られないことが問題点として挙げられていたが,その移動度を制限する要因については未解明だった。

研究グループは,高品質GaN/SiC基板上に高品質ScAlN/GaNヘテロ接合を成長させ,その電子輸送特性を詳細に測定・解析した。結晶を評価したところ,表面が原子レベルで平坦であり,急峻な界面が形成されていることを確認した。また,ScAlNはGaN上に擬似格子整合して成長していることを確認した。

成長させたScAlN/GaNヘテロ接合に対して,ホール測定用構造を作製し,ホール効果測定を行なった。電子濃度は3×1013cm-2程度とScAlNの分極値から予想される通りの高い値が得られた。移動度は,室温より低温になるにつれて増加し,次第に飽和して684cm2/Vsという値に到達した。得られた結果に対して解析を行なったところ,実験で得られた移動度の温度依存性を良く説明することができた。

特に解析においては,電子濃度が高いため,伝導帯の非放物線性に起因して有効質量が0.24m0程度にやや重くなることを考慮した。その上で,界面ラフネス散乱の計算には,量子井戸幅δ=2.6Å,相関長Λ=15Å(Λ/δ=5.8)という値を用いた。δはGaNのc軸長の約半分に相当する妥当な値であり,Λは従来のAlGaN/GaNヘテロ接合と比較して4割程度低い値であり,ラフネス(平坦性)が良くないことを示唆している。

この研究によって,高品質なヘテロ接合を成長させることで比較的高くリーズナブルな移動度が得られ,半導体物理に基づいてその散乱機構を明快に説明できた。今後はScAlN/GaNヘテロ接合のラフネス改善による移動度向上および高周波GaNHEMTの試作実証に取り組むという。研究グループは,これらの研究は高周波・高出力なGaNHEMTの研究開発を加速させ,次世代高周波通信技術の発展に貢献することが期待されるとしている。

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