信州大学の研究グループは,熱分解性を高めた変性アクリルガラスの開発に成功した(ニュースリリース)。
廃プラスチック問題や資源枯渇,カーボンニュートラル政策への対応として,プラスチックから炭素資源を再利用するケミカルリサイクル技術が注目されている。
中でも透明度が高く,製造コストも安価なため,照明機材や窓板,レンズ,大型水槽,光ファイバーなどに利用されているポリメタクリル酸メチル(PMMA)は,加熱により元のモノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)へ解重合できる特性があるため,実用的なリサイクル材料とされている。とはいえ,解重合に必要な温度が高く,エネルギー効率の課題が残っていた。
トリフェニルメチルエステル(トリチルエステル)は 300℃以上の高温加熱で熱分解し,二酸化炭素とラジカル(不対電子を持つ原子や分子)を生成する性質がある。研究グループは,このとき発生したラジカルを開始点として,PMMAの解重合を誘導する戦略を考案した。原料となるメタクリル酸トリチル(TMA)は,キラルカラムの固定相の原料として,工業的に生産されているモノマー。
PMMAは,工業的には塊状重合,もしくは懸濁重合で製造される。そこで,MMA(95mol%)とTMA(5 mol%)の共重合を同様の手法で実施したところ,いずれの場合も高重合度のポリマー(変性PMMA)が生成した。
変性PMMAはPMMAと同程度の透明度を示す一方,機械強度が向上したことがわかった。つまり,変性によるアクリルガラスとしての性能低下はない。一方で,熱分解性は大幅に改善し,300℃までにほぼ完全に解重合することがわかった。
そこで,変性PMMAを15分間かけて25℃から270℃まで減圧加熱すると,反応容器内にあった変性PMMAが消失した。このとき,反応容器は液体窒素で冷却したフラスコに接続されている。圧力を常圧に戻して,このフラスコを室温まで温めたところ,MMAが無色透明液体として高純度で回収された(収率95%)。以上から,TMAによる変性により,PMMAのリサイクル性を改善できることが確認された。
次に,市販のアクリル板への応用を検討した。アクリル板をカッターで切り出し,側基メチルエステルをトリチルエステルに変換した。これを減圧加熱すると,MMAが高純度で回収された(収率92%;アクリルガラス基準で再生率69%)。
研究グループは,PMMAの世界的な需要は300万トン以上に上るため,そのケミカルリサイクルを実現する手段として期待されるとしている。




