東北大ら,光電融合に適したSnS大面積単層結晶合成

東北大学,量子科学技術研究開発機構(QST),英ケンブリッジ大学は,二次元原子層物質の硫化スズ(SnS)の大面積単結晶の成長に成功し,さらにその結晶を単層厚さに薄膜化する新たな手法を確立した(ニュースリリース)。

地球上に豊富に存在し毒性もないスズ(Sn)と硫黄(S)の化合物である二次元原子層物質の硫化スズ(SnS)は,このような新奇スピン機能の発現が期待される材料の一つ。その特性を発揮するには単層であることが不可欠だが,これまで大面積の単層SnSを得るのは困難だった。

研究グループは,化合物前駆体を用いる従来の手法ではなく,元素状のスズ(Sn)および硫黄(S)を用いた化学気相成長(CVD)法により,高品質なSnSの選択的成長に成功した。熱力学状態図に基づいて反応を制御することで,SnSともう一つの安定相である二硫化スズ(SnS2)との間で相の切り替えが自在に行なえる成長条件を確立した。

成長した半導体結晶は,3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(ナノテラス)におけるX線吸収分光法をはじめとした様々な手法により評価した。

また,これまで困難とされていたSnSの大面積かつ単層レベルでの成長を,CVD成長と昇華プロセスの組み合わせにより実現した。単層結晶は,安全かつ高い再現性を持つ昇華プロセスにより得られる。さらに,この昇華プロセス中の薄膜化挙動を,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いたその場観察により可視化することにも成功した。

研究グループは,この研究における大面積の次世代半導体材料の作製技術は,革新的なスピントロニクスデバイスやバレートロニクス,光電子デバイスへの応用に向けた素子開発が加速することが期待されるとしている。

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