室工大ら,金属ごとの発光寿命と強度の違いを解明

室蘭工業大学と電気通信大学は,15種類の金属に対する超高速発光分光実験を行ない,スーパーコンピューターを活用した量子力学的計算および光学定数データベースを活用したモデル計算を行なうことで,数百フェムト秒の発光寿命と,数百倍の物質差異がある発光強度を説明することに成功した(ニュースリリース)。

発光ダイオード(LED)やレーザーなど,半導体を使った発光素子はその性能向上を目的として,世界中で研究開発が活発に行なわれている。物理学において発光とは,物質中の負の電荷をもつ電子と正の電荷を持つ正孔(ホール)と呼ばれる粒子とが再結合することで生じる現象。金属中では電子が自由運動することで,正孔の存在を瞬時に隠してしまうため,金属は光らないと考えられていた。

1969年に,寿命の長い特殊な正孔をつくることで,金(Au)や銅(Cu)などの貴金属も発光することが報告され,金属発光に関する研究が始まった。さらに,2003年には,表面ナノ構造を持った貴金属で発光強度が増大すること,発光スペクトルの幅が近赤外領域まで広く伸びていることが報告され,この研究を端緒として貴金属以外の金属における発光の研究への道が開かれた。

一方で,発光がどれくらいの時間持続するのか,光る金属と光らない金属の物質差異については,20年以上の未解決問題となっていた。

研究グループは,独自に開発した高感度フェムト秒発光分光法を用いて15種類の金属の発光を系統的に調べた。同時に,スーパーコンピューターを活用した量子力学的計算および光学定数データベースを活用したモデル計算を行ない,発光寿命と発光強度を理論的に予測した。

理論予測は,数百フェムト秒の発光寿命と,数百倍の物質差異がある発光強度に関する実験結果とよく一致し,世界で初めて様々な金属の超高速発光を統一的に説明すること成功した。

この現象には,電子と正孔だけでなく,フォノンと呼ばれる格子振動の量子や,表面プラズモンポラリトンと呼ばれる金属表面上でのみ存在できる光と電子の複合粒子との複雑なエネルギーの授受が関与している。

研究グループは,このモデルを合金の発光に応用することで,新たな発光素子の研究開発に発展するものと期待されるとしている。

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