千葉大ら,水も汚れも弾く構造色塗装技術を開発

千葉大学,武田コロイドテクノ・コンサルティング,物質・材料研究機構(NIMS)は,超撥水性を示す構造色塗装が可能な技術を開発した(ニュースリリース)。

構造色は,サブミクロンサイズの微細な周期構造に光が当たった際に,光の干渉・回折・散乱によって光が反射されて発現する。独特の光沢や艶があり,高い発色性や耐久性を示し,鳥や昆虫などの生物の発色にもしばしば見られる。

研究グループはこれまでに,孔雀の羽毛の色がメラニンが形成する微細構造由来の構造色であることに着目して,メラニン粒子を用いる構造色材料の作製を実現した。

しかし鮮やかな発色が可能である一方で,構造色の発現に時間がかかることが課題だった。また,塗料などへの応用には,見る角度を変えても同じ色が見える単色構造色の発現,ならびに,雨などの水を弾く撥水性や汚れを綺麗にする自浄作用が求められてきた。

研究では,混ぜるだけの簡便な手法でメラニン粒子と疎水性分子を反応させ,表面にさまざまな疎水性分子を導入した疎水化メラニン粒子を作製した。バルクの溶媒と粒子表面に拘束された溶媒の分子運動性が異なることを利用し,時間領域核磁気共鳴(TD-NMR)法により粒子の疎水性を評価した結果,表面にオクタデシル基(炭素数18のアルキル基)を導入した粒子は,高い疎水性を示すことで知られるフッ素化合物を導入した際と,ほぼ同等の疎水性を示した。

さらに,オクタデシル基を導入した疎水化メラニン粒子は,塗料などに使用されているヘキサンなどの有機溶媒への分散性が向上した。

作製した疎水化メラニン粒子を分散させたヘキサン溶液をガラス基板上に滴下すると,沸点の低いヘキサンがすぐに蒸発し,わずか数分で構造色による塗装が完了した。粒子配列の規則性を意図的に低下させたことで,角度を変えても色調が変化しない単色構造色が発現する。

刷毛や筆で建築材などに使われるメラミン化粧板などに塗装することも可能。得られた構造色塗装表面は,粒子表面の疎水性分子と,粒子同士が形成する階層的な凹凸構造の相乗効果により,水の接触角(CA)が160度以上となる超撥水性を示した。

この構造色塗装したメラミン化粧板に水を滴下すると,水が弾かれて転がり落ちるロータス効果が発現した。これは泥や埃などがついても雨が降ったら自然に流れ落ちる自浄効果を示す。

構造色は微細構造が維持される限り色褪せしないため,次世代塗装材料としての応用が期待される。研究グループは,微細構造のより強固な固定化手法も含めて研究開発を進めていくとしている。

その他関連ニュース

  • 名大,円偏光構造色と円偏光発光反転を示す粒子開発 2024年08月09日
  • 東大,構造色を示すフォトニック材料の開発に成功 2024年07月16日
  • 神大ら,褐藻が緑色に輝くように見える現象を解明 2024年05月21日
  • 神大,構造色インクで世界最軽量クラスの塗装を実現 2024年01月31日
  • リコー,車両塗装外観検査装置を発売 2023年12月20日
  • 信州大ら,複雑な構造色の重ね合わせに成功 2023年10月24日
  • 国立遺伝学研究所,花の構造色の因子を絞り込み 2023年09月20日
  • 名大,角度依存性の無いコレステリック液晶を開発 2023年07月27日