京大,透明かつ曲げ変形が可能なエアロゲルを作製

京都大学の研究グループは,ガラスのように透明かつ曲げ変形が可能な低密度多孔体(エアロゲル)の作製に成功した(ニュースリリース)。

断熱材の高性能化は,住宅やビル,工場,乗り物,物流などの分野においてエネルギー効率を高め,高い省エネルギー効果が期待されている。

一般的にはグラスウールやポリマーフォームなどの断熱材が多く用いられてるが,エアロゲルと呼ばれる低密度の多孔体は,このような汎用断熱材と比べて約半分程度の熱伝導率,すなわち2倍程度の高い断熱効果を示すことが知られている。しかしながらエアロゲルは,機械的な強度が非常に低いため,規模の大きい工業生産やアプリケーションが難しい。

エアロゲルは一般的にシリカを用いて作製されるが,研究グループでは過去に,より柔軟なシリコーンを用いてエアロゲルを作ることによって,圧縮変形に対して壊れにくく,また変形回復が可能なエアロゲルが作製できることを見出した。

今回の研究では,圧縮変形に加えて曲げ変形に対する強度を高め,より扱いやすいエアロゲルを作製することを目指した。これまでの研究と同様に,シリコーン骨格を作る原料としてはメチルトリメトキシシランを用い,ゾルーゲル法によってエアロゲルを作製した。

この研究のポイントは,均一な網目構造を形成させるために非イオン性のブロックポリマー型の界面活性剤を,ゲル化を促進するための触媒として有機強塩基を用いたこと。

これらの工夫により,直径が4〜10nmの繊維状骨格および5〜20nmの細孔をもつエアロゲルが得られ,これらが高い曲げ柔軟性を示すことがわかった。

これまでの作製法では直径が10nm程度の球状コロイド粒子が連結した構造のものが得られていたが,粒子と粒子の間の連結部が変形によって壊れやすく,曲げ変形性の低いものしか得られていなかった。

さらに,有機強塩基によって重合反応時のpHが適切に制御できるようになり,より均質性の高い多孔構造となった結果,ガラスのようなクリアな透明性を示すエアロゲルが得られることもわかった。

エアロゲルの強度や柔軟性を高める研究は世界中で数多く行なわれているが,そのほとんどが強度(柔軟性)を高めるために透明性や多孔性を犠牲にしたものだった。

つまりこの研究では,強度(柔軟性)と透明性が両立されたエアロゲルを世界で初めて報告することができ,エアロゲルの多孔構造と柔軟性や透明性との関係についての理解も深まったという。

研究グループは,この技術を利用してエアロゲルの工業生産やハンドリングが容易になり,透明性がさらに高まれば,高性能透明断熱材として広く利用が期待されるとしている。

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