山口大ら,体外観察できる近赤シリカナノ粒子作製

著者: sugi

山口大学,徳島大学,九州大学は,蛍光生体イメージングで体外からがん組織を深部まで観察できる近赤外蛍光・有機シリカナノ粒子の開発に成功した(ニューリリース)。

近年,ナノ粒子は医学生物学分野におけるイメージングへの応用に向けた研究開発が発展している。特に有機シリカ粒子は,従来の無機シリカ粒子と異なり,粒子の内部および表面にチオール基などの機能性官能基を豊富に含有し,蛍光色素などの様々な機能性分子を粒子内部と表面に結合することが可能になる。

研究では,チオール有機シリカ化合物とシアニン系近赤外色素であるIR-820を用いて近赤外蛍光・有機シリカナノ粒子の作製を行なった。IR-820 は主に粒子内部に存在し,粒子内で光学的特性に変化が認められた。蛍光特性において複数の新たな蛍光ピークが出現し,広い範囲の近赤外領域で蛍光が発生することがわかった。

さらに,アップコンバージョンが有機シリカの構造自体から惹起されることを確認した。そして粒子ががん組織に集積し,蛍光生体イメージングで観察できることを確認した。

また,粒子を静脈投与することにより生体内でマクロファージを標識し,右腰部の皮下に異種細胞を移植したところ,約2週間後に右腰部に蛍光が観察された。さらに皮膚をはがして異種移植細胞を観察したところ,強い蛍光が観察できた。

この結果は,粒子で標識したマクロファージが,皮下に移植した異種移植細胞へ移動し,集積したことを示し,異種細胞に対する拒絶反応に寄与した様子の観察に成功したことを意味しするという。

近赤外蛍光・有機シリカナノ粒子は生体内での毒性も低く,これによる蛍光生体イメージングは,細胞動態の長期的な観察を可能とし,生体内での新たな生命現象の可視化・発見に大きな可能性を示しすとする。

近年,シリカ粒子を用いた医薬の開発が進められており,海外で臨床応用やヒト臨床治験が進められている。近赤外蛍光・有機シリカナノ粒子においては蛍光生体イメージングによる画像診断の機能だけでなく,治療効果の付加も可能であり,診断と治療が同時に行なえる “診断と治療の一体化(セラノスティクス)”が可能な医療用ナノ粒子としての開発も進められているという。

セラノスティクスは個別化医療,患者に優しい革新的医療の実現につながる。なお,この研究プロジェクトは「ナノ・セラノスティクス国際センター」設立を目指す課題として,令和元年山口大学研究拠点群形成プロジェクトに採択された。

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