東大,SPRによる抗原―抗体間相互作用解析系を開発

著者: 梅村 舞香

東京大学の研究グループは,ブレビバチルス発現系と表面プラズモン共鳴法(SPR法)によるハイスループット相互作用解析装置を融合した,ハイスループットな抗原―抗体間相互作用解析系「BreviA」を開発した(ニュースリリース)。

表面プラズモン共鳴法(SPR法)は,分子同士の親和性を正確に測る方法の1つで,片方の分子をセンサーチップに固定した状態でもう片方の分子をその上に流し,結合した分子の量をリアルタイムで測定することができる。

これにより,分子同士の結合速度や解離速度がわかり,そこから親和性を算出できる。しかしながら,従来は高純度のサンプルが必要で,さらに同時に測定できるのは数種類であったことから,抗原と抗体の親和性に関する大規模なデータ取得には不向きだった。

そこで,研究グループは,抗原―抗体間相互作用解析系「BreviA」を開発した。この解析系では,抗体遺伝子の単離,抗体遺伝子配列解析,抗体発現,相互作用解析を多サンプル並列処理(最大384サンプル)することで,解析に必要な時間・労力を大幅に削減することができた。

BreviAでは,はじめに分析したいさまざまな抗体の遺伝子が含まれるプラスミドライブラリを作製し,それを用いてブレビバチルス菌の形質転換(遺伝子導入)を行なう。

遺伝子が導入された菌は寒天培地上でコロニーを形成する。各コロニーはそれぞれ,ライブラリ中の1種類の遺伝子がランダムに導入された菌の集合体。これらを培養し,菌体からは遺伝子を抽出し、抗体のアミノ酸配列を同定する。

培地上清には,そのアミノ酸配列を有した抗体が含まれている。これをSPR測定用のセンサーチップに固定化し,抗原との相互作用解析を行なう。

ここで,センサーチップの表面には抗体に融合したペプチドタグと特異的に結合できる官能基が存在するため,精製作業を行なうことなく,さまざまな分子が含まれる培養上清の中から,抗体だけを特異的に固定化することができる。

ヒトPD-1タンパク質に結合する抗体をもとに,マウスPD-1タンパク質にも強く結合できるような抗体設計に取り組んだ。BreviAを用いた抗体変異体スクリーニングにより,ヒトPD-1への結合能を維持したまま,マウスPD-1への結合能を高められる変異導入領域を特定し,その領域にさらに多様な変異を導入することでマウスPD-1への結合能を100倍以上高めた抗体の設計に成功した。

研究グループは,BreviAでは抗体配列と相互作用パラメータからなるデータセットをハイスループットに取得できることから,今後は機械学習を用いた抗体設計への応用が期待されるとしている。

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