東北大ら,半導体プロセス互換反強磁性材を制御

東北大学,豪ニューサウスウェールズ大学,スイス連邦工科大学,英放射光施設ダイヤモンドらは,反強磁性スピン秩序の電気的制御と長時間の状態保持が可能なうえ,半導体プロセスと互換性のある多結晶金属ヘテロ構造を開発し,その様子を可視化することに成功した(ニュースリリース)。

「反強磁性スピントロニクス」の工学利用への注目が高まっているが,電子デバイスとして応用するためには,現行の半導体プロセスと互換性がある材料に機能性をもたせることが課題となっている。

今回作製した多結晶反強磁性金属ヘテロ構造の膜は,反強磁性金属としてPtMn(白金-マンガン)合金が用いられている。この材料は,ハードディスクドライブの読み取りヘッドや第一世代の磁気抵抗ランダムアクセスメモリで利用されている。

研究グループは微細加工技術によりこのヘテロ構造からなるデバイスを作製し,その特性を電気的に評価したところ,書き込み電流によって反強磁性スピン秩序が制御できていることが分かった。詳細な実験から,この現象はPtMn層の上側に設けられたPt(白金)層が量子相対論的効果によって発現するスピンの流れによって誘起されていることが明らかになった。

続いて,記録された状態の熱的な安定性を調べるため,書き込みを行なったのち長時間放置し,ホール抵抗を逐次測定する実験を行なった。その結果,5時間に渡って状態が安定して保持されていることが分かった。

最後に,観測されたホール抵抗の変化が反強磁性スピン秩序の変化によるものであることを確認するため,放射光施設においてX線磁気線二色性を用いた光電子顕微鏡法による反強磁性スピン秩序を直接観察したところ,スピン秩序の変化に対応した白黒のコントラストの変化が確認できたという。

今回,半導体プロセスと互換性のある材料で反強磁性体の電気的制御を実現できたことから,研究グループは,今後いくつかの課題を克服することで,革新的な電子デバイスやそれを利用したエネルギー効率の高い人工知能ハードウェアなどの実現へと繋がっていくことが期待されるとしている。

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