高輝度タイプと超小型タイプのRGB半導体レーザー光源モジュール開発 ─実装実証で優位性を確認

高輝度空間多重化技術
高輝度空間多重化技術

今回開発した光源モジュールは,同社の“BLUE IMPACTテクノロジー”をベースとしたものとなっており,高輝度タイプでは複数の半導体レーザー素子を並列した際に発生する間隙を取り除くため,新たに開発した空間多重光学系を用い,レーザー光のフィルファクターを高めて,高出力・高輝度なビームを作り出すという高輝度空間多重化技術を導入した。高輝度タイプではマルチモード光ファイバーで出力する。この技術は加工用として製品化した青色レーザー光源モジュールでも採用されている。

超小型波長多重化技術
超小型波長多重化技術

一方,超小型タイプは一円玉ほどの小さな空間に波長多重光学系を作り込み,RGBの半導体レーザーを同軸で合成するもので,シングルモード光ファイバーで出力する。現在の仕様だが,R:640 nm・G:520 nm・B:460 nmの平均出力は30 mW,ビーム径はRが5 μm,Gが約4 μm,Bが3 μm,ビーム拡がり角が5°,ビーム品質はM2≒1,ビーム楕円率が1(偏波保持),入力電圧がR:3 V/GB:5 V,動作温度範囲が~40°となっている。

ファイバー径は両タイプともに200 μmで,汎用性や自在なレーザー光の取り回しを可能にする。また,超精密レーザー溶接によって1,000分の1ミリ単位で組み立てることで,信頼性の高いシステムとした。

東條氏は,今回のレーザー開発にあたって,「特に短波長光という観点では,光子エネルギーの高い光を高出力にして扱うということで,ファイバーを始め,光学素子に対するダメージを如何にして抑えるかがポイントであった」としている。また,高出力化を実現するにあたっては,配置する多数の半導体レーザー素子をセット化し,複数のユニットにすることで位置調整の効率化を図ったという。

ユースケースにおけるレーザーの優位性
ユースケースにおけるレーザーの優位性

今回開発したモジュールを9社(パナソニック,パイオニア,IDEC,QDレーザ,セイコーエプソン,ホンダ,スタンレー電気,三菱電機,日立製作所)の機器メーカーに提供し,走査型レーザー投射装置,高輝度表示装置,レーザー照明において評価。LEDと比較した結果,省エネ性能,色再現性/色強調性,高輝度(高効率),サイズなど,ほぼ全ての項目でその優位性を実証した。

走査型レーザー投射応用では省エネ性能について,LEDの2%に対して16%,焦点深度でもぼけは見られず,色再現性ではLEDの0.52に対して1.0,黒浮きもLEDの0.14 cd/m2に対して0.005 cd/m2という性能を示した。

レーザーの優位性
レーザーの優位性

高輝度表示装置応用では,LDプロジェクターとLEDプロジェクターとで比較。その結果,体積は231 cm3→27 cm3,光利用効率は24%→92%,輝度は1,844 lm→5,705 lm,省エネ性能が14.6 lm/W→30.9 lm/W,色域が73.6%→95.7%と向上することが分かった。

レーザー照明では,LED照明に対して輝度(遠方照射)が0.4 W/mm2sr→3.66 W/mm2srと9倍に高まることを示した。照射距離はLEDでは100~150 m程度だが,レーザーでは1,000 mを可能にするという。自動車用ヘッドライトへの適用に関心が高まっているのも,このためだ。

開発したレーザー光源モジュールの本格的な市場投入は今夏以降を予定しており,開発ではさらなる高出力化を図っていくとしている。