医療機器市場を狙う近赤外線LED分光装置

一方,アルプス電気はウェアラブル近赤外分光センサーを開発している。センサーのヘッド部には2種類の近赤外線LED(波長非公表)と受光素子を搭載しており,体内からの散乱光を検出することで,皮膚に密着させるだけで体内の血液成分を調べることができる。

具体的には,2種類のLEDから赤外光を体内に照射し,それぞれの散乱光から静脈血中の脱酸素化ヘモグロビン(Deoxy-Hb)と,動脈血中の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)の濃度を検出する。ここから得たデータから,脈拍,ヘモグロビン度,酸素度について,測定開始時からの変化をモニタリングすることができる。

センサーヘッドとメイン基板,電源を組み合わせたモジュールのサイズは12×18×5 mmと指先サイズなので,体の部位を選ばずに低拘束で生体情報を取得できる。

これと似たセンサーとして,ウェアラブルデバイス向けに緑色LEDを用いたものが既に他メーカーより製品化されている。しかし同社によると,緑色光は近赤外光に比べて体内で吸収されにくいため,計測できるデータは脈拍などに限られるという弱点があるという。

さらに,このセンサーは頭部のあらゆる部位で静脈測定が可能であるとして,北米脳神経科学学会において2年連続でポスター発表に採択されるなど,高い反響があったという。

開発は光産業創生大学院大学の江田英雄教授の技術監修を受けて行なわれ,同大発ベンチャーのジーニアルライトのアルゴリズムを活用している。同社はピコアンペアレベルの微弱な光を検出する技術に長けており,医療開発にも強みを持つ。

アルプス電気では,光センサーなど複数のセンサーを組み込んだIoT開発キットを発売しており(2月号P79参照),これと組み合わせることでパラメーターを追加し,例えば過酷な環境下で働く作業員や,一人暮らしの高齢者の体調管理にも役立つのではないかとしている。具体例として,IoTキットと共にこのセンサーを組み込んだマウスを試作し,オフィスワーカーの健康状態やストレスチェックなどが行なえることを示した。

同社ではこのセンサーをまずはモジュールとして,セットメーカー向けに2017年に販売を開始したいとしている。◇

(月刊OPTRONICS 2016年6月号掲載)