暗黒物質や暗黒エネルギー、太陽系外惑星の探査を主要な目的とするNASAの「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(Roman)」が、2026年8月30日の打ち上げを予定している。SpaceXの大型ロケット「Falcon Heavy」に搭載され、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから宇宙へ向かう計画だ。打ち上げは当初計画から大幅に前倒しされている。

Romanは、ハッブル宇宙望遠鏡と同じ口径2.4mの主鏡を備える一方、広い天域を効率よく観測することに重点を置く。主力の広視野観測装置(WFI)は、4096×4096画素の検出器18枚で約3億画素の焦点面を構成し、0.48~2.3μmの可視~近赤外域を観測する。視野は約0.281平方度で、NASAによればハッブルの近赤外カメラ「WFC3-IR」と比較して約200倍の範囲を一度に捉えられるという。8種類のフィルターのほか、プリズムとグリズムによるスリットレス分光にも対応する。また、180秒間の波面誤差の変動を1nm RMSに抑える像安定性が求められており、広視野と精密光学を両立させた観測装置といえる。
光学技術でもう一つ注目されるのが、系外惑星の直接観測につながるコロナグラフ装置である。明るい恒星光をマスクで抑えるだけでなく、2枚の可変形鏡と波面センシング・制御技術を組み合わせ、光学系で生じる微小な乱れを補正する。可変形鏡には1600個を超えるアクチュエーターが配置され、62pmを下回る精度で制御できる設計とされる。宇宙空間でこうした高コントラスト観測を実証することは、将来の地球型惑星の直接観測へつながる技術的な足掛かりとなりそうだ。
このコロナグラフには、日本の光学技術も使われている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とする日本チームは偏光観測用光学系の設計に参画し、光学技研が製作したウォラストンプリズム、三共光学工業による集光レンズを提供した。さらに、恒星光を抑えるコロナグラフマスク用の精密光学基板には、夏目光学の高精度な研磨・コーティング技術が生かされている。
Romanは宇宙の構造や惑星系の成り立ちを探る大型観測計画であると同時に、近赤外線検出、精密光学、偏光、高精度波面制御といったフォトニクス技術の実証の場でもある。打ち上げ後にどのような宇宙像を見せるのか、その観測成果とともに、搭載された光技術にも注目したい。



