東大ら,光磁場による研磨のメカニズムを解明

東京大学と分子科学研究所らの研究グループは,光の振動方向を制御した光による表面研磨法を用いることで,高い振動数を持つ光の周波数(約1ペタヘルツ。1秒間に1000兆回振動)の振動磁場によって物質を加工することが可能であることを世界で初めて明らかにした(ニュースリリース)。

電子デバイスや光バイスの開発には,ナノメートルサイズの基盤の表面を平たんにする技術が欠かせない。化学物質や物理的に研磨する従来の方法による平たん化では,基板が損なわれたり,異物が基板に残ってしまうという問題があった。

この問題を解決するため,研究グループは,光を利用して基板に接することなく平たん化できる近接場光エッチングという手法を確立している。一方,研磨を含む光を用いた加工では,光による磁石的な力(磁場)ではなく,光による電気的な力(電場)が研磨に寄与していると考えられていた。

今回研究グループは,ダイヤのような透明で高い屈折率を有するジルコニア(ZrO2)の表面の凸凹が光エッチング法により研磨される表面形状を観測したところ,この凸凹の研磨には,磁場が大きく関与していることがわかった。

これは,光の周波数で振動する磁場が加工に利用できることを意味する。光は電磁波であり電場と磁場が交互に発生しているが,光の周波数領域において発生する磁場は物質に影響を与えないことから,これまで光加工において,磁場による影響は無視され,電場のみが想定されてきた。

今回の発見は純粋な基礎研究への寄与だけではなく,より複雑な微細加工の制御に大きく役立つものだとしている。

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