収差4—コマ収差—

4.3.3 コマ収差

軸上で球面収差が取れていれば良い結像が保証されるかというと,事はそれほど単純ではない。実際Abbeは顕微鏡対物レンズの設計に際し,球面収差補正だけで像が良くならないことに腐心した。光軸外で発生する収差として次にコマ収差を取り上げる。

4.3.3.1 正弦条件

正弦条件はAbbeが顕微鏡の結像解析で,解像性能とコントラストの両立を図るために見つけた法則である。コンピュータのない時代,軸上光束の挙動を追うだけで,軸外の性質が分かる事は画期的であった。

正弦条件には色々な導き方が提案されている。前章の波動光学的な計算では物体面をFourie変換したパターンが瞳面に現れ,さらにそれを逆Fourie変換が像に現れる関係を用いて結像関係を解析した。物体からの回折はsine関数を使った現象として起きるので,それと対応する像側からの光でも相反性からsine関数に基づく関係が成立しなければならない。

結果から示すと正弦条件はFourie変換の関係を介して結ばれる物体面の角度uと像面の角度u′との間に

式(20) (20)

が成立するという条件である。式(20)が成立すれば物体と像側のつなぎが矛盾なく行われる。物体が軸上無限遠にある場合はsin uが0になってしまうので,式(20)は光線の高さをh,焦点距離をf′とした時に

式(21) (21)

と書き換えることができる。

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