光周波数コムを用いた光フェーズドアレイ

3. 光周波数コムを用いたフェーズドアレイの原理

 本研究で提案する光フェーズドアレイは,超短パルスの位相をfrepfceoで全帯域制御し,共振器型の遅延光路で光アンテナを構成することで実現する。図3に提案する光コムによる光フェーズドアレイの原理図を示す。

図3 光コムを用いた光フェーズドアレイの原理図
図3 光コムを用いた光フェーズドアレイの原理図

 本手法では,光コムのfrepfceo図2参照)の周波数比を調整することにより,超短パルス列の全帯域位相制御が実現できることを利用する。例えばfrep =4fceoの周波数関係を維持すると,キャリア位相が90度ずつ変化した超短パルス列が出力され,我々が以前開発した光コムによる光演算手法を用いた瞬時3次元計測手法において,すでに実用レベルで動作している14, 15)。つまり,この周波数比を調節することで個々のパルスの位相関係を自由に制御できる。

 次に位相制御された超短パルス列を光アンテナに導入する。光フェーズドアレイは互いに一定の位相差をもつ光を出射することで任意の波面を作るため,位相関係を与えた超短パルス列を空間的に再配置することで光アンテナを構築し,光フェーズドアレイが実現できる。

そこで図3に示すように,マルチパスキャビティ(MPC)により超短パルス列を円周上に再配置し,更にパルス間隔とMPCの間隔を合わせることで,一連の位相差パルス群が同時にMPCから出射させる。この出射点が光アンテナに相当する。

この時出射する個々のパルス強度の差を抑えるため,光コムのパワーを十分大きくして出射面の透過率を低く抑えるとともに,設計が十分進めば, NDフィルタを出射面にコーティングして強度バランスを取る。この手法のポイントは,空間光学系を用いているために分散の影響がない点である。最後の出射面へ向かう際にはガラスを透過するが,各光アンテナから出射するパルスはすべて1回だけ透過することになるので,全て同じ分散が与えられる。これにより,全帯域で所望の位相関係を持った超短パルスが出力される。

 上記の提案手法の基本原理を検証するため,形成した干渉波面が周波数比で制御できることや,環境変動を制御により抑制する手法の検証を行った。実際にfrepfceoの周波数比が変化することで,たしかに干渉波面が変化している様子が確認された。特にマイクロ波周波数基準を用いて制御することで,現在周波数比で6桁以上(光周波数で12桁以上)の安定度を達成している。現状ではfceoの安定度に改善の余地があり,さらに安定度を高めることができる。

 また,空間光学系であるMPCの環境変動を抑制する制御手法も開発した。提案手法ではMPCの共振器長がパルス間隔と一致している必要がある。しかし環境変動によってMPCの共振器長が変動するため,干渉波面が変動してしまう。一方でパルス間隔はfrepで制御できるため,この環境変動にfrepを同期させることで,空間光学系であるMPCの変動による波面変化を抑制することが出来る。そして所望の周波数比となるようにfceoを追従させることよってキャリア位相も同時に安定化される。この環境安定化手法についても実験的に検証し,提案する光フェーズドアレイのロバスト性を確認した。

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