阪大ら、光で発熱する金ナノ粒子を環境負荷なく合成する方法を開発

著者: オプトロニクス 編集部

大阪大学、京都工芸繊維大学、シンガポール国立大学は、微細藻類の抽出液を用いたグリーン合成法により、高品質な金ナノ粒子を合成する方法を開発した(ニュースリリース)。

金ナノ粒子とは、直径が数10nmほどの極めて小さな金の粒子。光を吸収して熱に変える性質(光熱変換)を持ち、がんの光熱治療などへの応用が期待されてきた。しかし、従来の化学合成法では粒子の凝集や不安定化が避けられず、それを防ぐために有害化学物質を必要とするなど、生体適合性や環境への悪影響が課題だった。

研究グループは、高温耐性をもつ新規の緑藻Coelastrella thermophilaと、食品用途でも知られるシアノバクテリアArthrospira sp.(スピルリナ)に着目した。これらの藻類の抽出液には、還元作用をもつタンパク質・多糖・脂肪酸などの天然分子が豊富に含まれている。これらを還元剤兼安定化剤として利用することで、有害な化学薬品を使わず、一段階で金ナノ粒子を合成できることを見出し、さらにその条件の最適化に成功した。

得られたバイオ由来の金ナノ粒子は、粒径が数10nmで、粒子表面に藻類由来の分子が自然に自己組織化的に吸着していた。その結果、溶液中でも48時間以上安定に分散したまま凝集せず、高い光熱安定性を維持することが確認された。

そして従来手法の化学合成から得られた金ナノ粒子に比べると、天然分子による表面修飾が細胞との相互作用を緩和するために、正常細胞(Vero細胞)に対する毒性が低く、生体適合性に優れていることが明らかになった。

さらに、研究グループは緑色レーザー光(532nm)を照射して光熱効果を検証した。その結果、バイオ由来の金ナノ粒子は光エネルギーを効率よく熱に変換し、また活性酸素種(ROS)も発生させることでがん細胞(HeLa細胞)を死滅させた。

研究グループは、この手法は、金属ナノ粒子を有害化学薬品を使用せずに、生物由来の素材で持続可能に大量合成できる新しいプロセスとして、医療分野のみならず、触媒、バイオセンシング、光機能材料など幅広い分野への展開が期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 慶大,金のプラズモン現象に必要な最小単位を解明

    慶應義塾大学の研究グループは,金(Au)原子の数を1個単位で精密に制御した金ナノクラスターを用い,蒸着した固体表面に光照射することによる光電子放出過程を詳細に解析することで,局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の発現に必要…

    2025.06.27
  • 愛媛大ら,金ナノ粒子上のDNA構造と密度の影響解明

    愛媛大学と理化学研究所は,表面にDNAを修飾した金ナノ粒子を用いた標的DNA検出における,DNAの高次構造および密度の影響を明らかにした(ニュースリリース)。 直径が数~数十nmの金ナノ粒子の水溶液は,分散状態では赤色を…

    2025.03.25
  • 阪大,光の圧力による遠隔作用をシミュレーション

    大阪大学の研究グループは,金ナノ微粒子のコロイド溶液とガラスの界面を想定して,複数ビームを照射した場合のシミュレーションを行ない,照射によりランダムに運動するナノ微粒子が各ビーム集光点で2次元配列体を形成すること,さらに…

    2024.09.11
  • 名大ら,ナノ多孔体に貴金属原子を均一に孤立分散

    名大ら,ナノ多孔体に貴金属原子を均一に孤立分散

    名古屋大学,早稲田大学,豪クイーンズランド大学は,アモルファス(非晶質)の金属骨格からなるナノ多孔体を支持体として用いて,貴金属原子を均一に孤立分散させる方法を提案した(ニュースリリース)。 原子レベルで分散された金属は…

    2024.06.25
  • 分子研ら,キラリティによる左右円偏光の選択性発見

    分子科学研究所(分子研)とソウル国立大学校は,キラルな金ナノ微粒子を近赤外域のフェムト秒パルス光で照射した際に可視域に見られる発光が,微粒子のキラリティ(掌性)に依存して,高い選択性で左回りまたは右回りの円偏光となってい…

    2024.06.06
  • 千葉大ら,光渦で金ナノの超精細パターニングに成功

    千葉大学,北海道大学,大阪公立大学,大阪大学は,金ナノ微粒子が分散する懸濁液(金ナノインク)に光渦を照射することで,従来のインクジェット技術の限界を凌駕する微小なドットが印刷できることを実証した(ニュースリリース)。 近…

    2024.03.13
  • 静岡大,金のナノ粒子を着色剤にカラーフィルム開発

    静岡大学の研究グループは,直径50nm程度の金ナノ粒子を自己組織化的に集積させた膜を作製し,シリコーンの一種である無色透明なPDMS(ポリジメチルシロキサン)を滴下することにより金ナノ粒子固有の発色を示したカラーフィルム…

    2024.02.21
  • 都立大ら,安定/反応性を両立した金ナノ粒子を開発

    東京都立大学,東京大学,物質・材料研究機構は,金属酸化物ナノクラスターで保護することにより,高い安定性と触媒活性を両立した金ナノ粒子の開発に成功した(ニュースリリース)。 金は安定で反応性に乏しい金属とされてきたが,サイ…

    2024.02.07

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア