東大ら,有機半導体によるUHF帯整流ダイオード開発

著者: 梅村 舞香

東京大学,物質・材料研究機構,岡山大学,米ジョージア工科大学,米コロラド大学は,有機半導体を用いた整流ダイオードにおいて,920MHzの交流電力を直流電力に実用的な効率で変換することに,世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

有機半導体は,インクジェットなどの低コストな印刷プロセスにより,フレキシブルなセンサーや電子回路,太陽電池などの光・電子デバイスを製造できる次世代のエレクトロニクス材料として注目されている。

どこにでも貼り付けて機能するIoT素子を実現するには,無線によって情報や電力をやり取りする機能が不可欠となっている。しかし,数メートル程度の通信距離を可能にするには920MHzといったUHF帯での通信が必要となり,有機半導体素子ではこれまで動作速度が十分ではなかった。

この課題に対して,研究グループは有機整流ダイオードの性能を飛躍的に向上させ,920MHzにおいてこれまでの報告と比べて1000倍以上高い電力変換効率を実現した。

研究グループは,還元性を持つ二量体錯体を電極表面に作用させる手法を採用した。この錯体が電子を供給することで,電極表面に電子が注入され,逆符号の電荷を持つ錯体カチオン分子が,単分子膜の厚さで自己組織的に吸着する。

このように処理した下部電極の上に有機半導体インクをコーティングし,さらに上部電極を重ねるというシンプルな工程で,有機整流ダイオードを作製した。完成したダイオードは,電圧の方向によって流れる電流値が1000倍以上異なり,一方向にのみ電流を流しやすい整流特性を示した。

また,下部電極から有機半導体への電子注入が非常にスムーズであるため,2Vという低電圧で100A/cm2の高い電流密度を実現している。光電効果による測定では,金薄膜の仕事関数が4.8eVから3.7eVへと大きく低下していることが確認された。

さらに,今回開発した処理によって得られる低い仕事関数は,大気中にさらした後でも安定して維持されており,デバイス応用に適していることが明らかになった。

この下部電極からは,有機半導体のLUMOに対して効率よく電子が注入される。一方で,上部電極からの電子注入には高い障壁があるため,電流は主に一方向に流れやすくなっている。このような構造により,ダイオードは920MHzという高周波においても安定に動作し,交流電圧を直流電圧に変換することに成功した。さらに,精密な半波整流の測定により,5.2%という高い電力変換効率が得られた。

研究グループは,整流機能は,無線通信素子が電波から電力を取り出して動作するために不可欠な技術であり,今後のIoT応用に大きく貢献すると期待されるとしている。

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