オーストラリア国立大学らの国際研究グループは,ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)がとらえた大規模観測データを解析し,これまで不可能だった遠方銀河において二層円盤構造(薄い円盤・厚い円盤)を同定することに成功した(ニュースリリース)。
現在の宇宙に存在する円盤銀河では,若い星からなる薄い円盤と,年老いた星からなる厚い円盤の二層構造が見られるが,こうした二層構造が銀河の形成過程はこれまでわかっていなかった。その解明には宇宙の過去に存在した銀河の姿を観測する必要があるが,遠方銀河において薄い円盤と厚い円盤を分離して調べることは困難だった。
研究グループは,JWSTの観測データを用いて,円盤を真横から観測できる111個の銀河を対象に星の分布を詳細に解析した。その結果,遠方の銀河(13億年前から100億年前に相当する44個の銀河)で,薄い円盤と厚い円盤からなる二層構造が存在することを初めて同定した。
解析の結果,宇宙初期では厚い一層構造を持った銀河が多く,宇宙後期に二層構造を持った円盤が多くなることがわかった。そして,円盤銀河が,最初に厚い円盤を形成し,その後,その内側に薄い円盤が形成されるという進化の過程を捉えることに成功した。
また,銀河の質量が大きいほど薄い円盤を早く形成する傾向が見られた。特に,天の川銀河と同程度の質量を持つ銀河において形成された薄い円盤の年代は,天の川銀河の星の年齢から推定される薄い円盤の年代(80-90億年前)とおおよそ一致することを確認した。
円盤進化の物理的理解 観測で初めて明らかになったこの進化過程の物理的背景を探るために,研究で明らかにした円盤の星の分布構造とアルマ望遠鏡や超大型望遠鏡VLTといった地上望遠鏡を用いた過去の研究によって測定された(星の材料となる)ガスの運動を比較した。
これにより,初期宇宙では,ガス量が多く乱流の強い円盤が形成され,このような環境下で活発な星形成が起こり,厚い円盤が形成された。星円盤の形成によってガス円盤が安定化し,乱流が次第に減少する。結果として,より薄い円盤が,厚い円盤の内側に形成される。銀河質量が大きいほど,ガスから星への変換効率が高く,薄い円盤の形成が早まるシナリオがわかった。
研究グループは,円盤銀河がどのように形作られてきたか,そして天の川銀河が宇宙の歴史の中で普遍的な形成過程を辿ってきたのか,という問いへの答えに近づくことが期待される成果だとしている。