NTTら,高出力な300GHz帯信号生成システムを実現

日本電信電話(NTT),NTTイノベーティブデバイス,米Keysight Technologies, Inc.は,J帯(220GHz~325GHz)をフルカバーする広帯域な増幅器モジュールと,信号の歪を高精度に補償可能な測定システムを開発し,それらを組み合わることによって300GHz帯で0dBmの高出力,かつ280Gb/sの世界最高データレートの信号生成に成功した(ニュースリリース)。

100Gb/sを超える高速無線通信などでの活用が期待される300GHz帯においてはJ帯のWR3.4導波管が測定器の入出力インターフェースとして使用されている。そのためJ帯を用いた無線通信やレーダーの開発においては,J帯をサポートでき,かつ高速な変調信号を高出力で発生できる信号生成システムが必須となる。しかしながらJ帯の信号の増幅が必要になることと,高速・高出力になるにつれて信号の歪の悪影響が増大することにより,従来ではそれらを同時に解決する信号生成の実現が困難だった。

今回,NTTでは独自に開発した高速動作が可能なInP系化合物半導体を使用し,広帯域なインピーダンスマッチング回路と低損失な合波器回路を搭載した増幅器集積回路(IC)を新たに設計・開発した。

この回路構成により,従来では困難であったJ帯の全周波数領域での低損失な信号合成を実現し,J帯フルバンドでの高出力化を達成している。さらに後述のキーサイトの歪補償技術にNTTおよびNTTイノベーティブデバイスが開発した増幅器モジュールを適用し,広帯域性と高線形性を両立した信号生成システムの構築を行ない,高速・高出力の信号生成に成功した。

NTTイノベーティブデバイスは,NTTが設計した増幅器ICを上述のInP系化合物半導体を用いて製造を行なった。さらにNTTで設計された低損失のJ帯の導波管パッケージに対してICの実装を行なうことで,増幅器モジュールを開発し,今回の実験に提供した。この増幅器モジュールはJ帯の全帯域をカバーし,最大+9.1dBmの高出力を実現している。

キーサイトは独自に開発した信号の歪特性を測定する装置および,歪を高精度で補償する信号処理技術を提供した。今回,300GHz帯における世界最高データレートで今回の技術を適用することに成功した。

上記の取り組みにより,300GHz帯において,これまで報告された中で最も高いデータレートである280Gb/sの信号生成を達成した。出力パワーは,従来のデータレートのレコード値のパワーと比較して約8倍高く,実用に足る0dBmの高出力を実現したという。

研究グループは,高速・高出力な信号生成システムの提供によりサブテラヘルツ波の産業応用の加速に期待するとしている。

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