情報通信研究機構(NICT)と住友電気工業は,標準外径(0.125mm)の19コア光ファイバで,1.02Pb/sの1,808km伝送の実験に成功した(ニュースリリース)。
標準外径の19コア光ファイバは,これまでに1Pb/sを超える伝送容量は実証されてきたが,1,000kmを超える長距離の伝送までは実証されていなかった。
今回,住友電工は標準外径の結合型19コア光ファイバの設計・製造を担当し,コアの構造と配置の最適化により,複数の波長帯域(C帯,L帯)で光ファイバの損失低減を実現した。NICTは19コアの信号を同時に増幅する機能を有する伝送システムの開発と実証を担当し,1.02Pb/s・1,808kmの伝送容量・伝送距離を達成した。
伝送システムは,送信系,受信系,周回伝送系からなる。周回伝送系は,19コア光ファイバ,合波器/分波器,光増幅器,周回制御スイッチから構成される。19コア光ファイバ用の光増幅中継機能は,各コアの光信号に対応するように並列にした19台の光増幅器により実現される。
19コア光ファイバの信号は,分波器により各コア用に分岐し,光増幅器により伝搬中の信号減衰が補償され,合波器により各コアの信号が再び光ファイバに入力される。今回の実験では,送信系にてC,L帯における180波長の偏波多重16QAM信号を19コア多重して合計1.02Pb/sの光信号を生成し,1区間当たり86.1kmの19コア光ファイバを19回周回させた。
周回伝送後,受信系にて全コアの信号を一括で受信し,MIMOデジタル信号処理によってコア間の信号干渉を除去し,各波長のデータレートを測定した。総伝送容量は1Pb/sを超えており,また,総伝送距離は,おおよそ札幌-福岡間に相当する1,808kmとなり,国内の大都市を結ぶネットワークに適用できることが実証された。
伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算すると,1.86Eb/s・kmとなり,これは標準外径光ファイバの世界記録となるという。
研究グループは,今回開発した技術は,通信需要が高まる将来において,光通信インフラの通信容量拡大と長距離化の両面で大きく貢献すると期待されるとしている。