広島大ら,光るマウスで筋骨格がつながる仕組み解明

広島大学,愛媛大学,京都大学,岐阜大学は,軟骨は緑,腱・靱帯は赤く光る蛍光レポーターマウスを用いて,体が作られていく過程で,これらの組織がどのようにつながっていくのかを高解像度の三次元的(3D)蛍光イメージングで明らかにした(ニュースリリース)。

近年,組織透明化と高解像度の3D蛍光イメージングが注目されている。組織透明化の技術を用いることで,細胞や組織の構造を保持したまま,深部の情報を観察することが出来る。さらに,特定の細胞が光る蛍光レポーターマウスを組み合わせることで,組織のつながりや成長の様子を詳しく調べることができる。

筋骨格システムの機能的な連結においては,腱・靱帯の成熟に重要なScxと,軟骨の成長を司るSox9という転写因子が注目されている。これらの転写因子が同時に働くScx+/Sox9+細胞が,腱と軟骨をつなぐ役割を担っている。

しかし,ScxとSox9の発現のON-OFFの切り換えやこれらの細胞が3Dの空間内でどのように分布し動いているかについては,未解明な部分が多く残されていた。そのため,これらの課題を克服し,筋骨格システムがどのように確立されるのかを明らかにするための新たなモデルを用いたアプローチが求められていた。

研究グループは今回,腱・靱帯に関与する転写因子Scxの発現を赤く,軟骨形成に関わるSox9の発現を緑に光らせる蛍光レポーターマウス(ScxTomato;Sox9EGFP)を作製し,これを用いて胚の発生過程を可視化した。さらにCUBICやTDEといった透明化技術を駆使し,マウス胚を立体的に観察可能な状態に処理した。

組織の薄い切片による解析および共焦点顕微鏡や二光子励起顕微鏡による3D解析を行った結果,胚発生過程において腱や靭帯と軟骨がどのように関わり合っているかを視覚的に捉えることができた。

また,SHG信号と重ね合わせて,赤色蛍光を発する腱や靭帯を詳しく観察したところ,成熟した腱と未成熟な腱を明確に区別できることが分かった。腱と軟骨の境界部位にはScxとSox9を同時に発現する細胞が局在しており,これらの細胞が両者の接続に重要な役割を果たしていることが明らかになった。

また,SHG(二次高調波)信号を併用することで,腱の成熟度を可視化でき,Scxを欠損させたマウスでは,腱が未熟なままとなり,筋肉構造にも異常が見られることが示された。

研究グループは,この研究成果は,腱や靭帯の形成メカニズムの解明に加え,腱・靱帯付着部疾患の病態理解や再生医療への応用が期待されるとしている。

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