島津,世界初小型化に成功した光格子時計の発売開始

著者: 梅村 舞香

島津製作所は,18桁精度に相当するストロンチウム光格子時計「Aether clock OC 020」(イーサクロック)の受注を開始した(ニュースリリース)。希望販売価格は5億円(税込)。

光格子時計は原子時計の一種で,現在の秒の定義の基準となっているセシウム原子時計に対して100倍以上の精度を実現する。18桁精度は100億年に1秒の誤差に相当し,光格子時計は次世代の秒の定義の有力な候補として注目されている。

同社は,2017年から東京大学の研究グループと共同研究を開始し,翌年実施した東京スカイツリーでの一般相対性理論の検証実験では,光格子時計の制御システムを開発した。その後,搭載レーザーおよびこの製品の開発も手掛け,小型化に加えてレーザーの堅牢性の向上,レーザー周波数の自動調整・制御技術の開発を実現した結果,世界初の製品化への道筋を付けられた。

従来の光格子時計では,煩雑な調整業務が頻繁に必要だったが,この製品では作業者の負荷を大幅に低減できる。小型化で移設が容易になったことにより,様々なフィールドで一般相対性理論を利用した重力ポテンシャル測定に応用できるとしている。

例えば,数cm精度のプレート運動や火山活動による地殻の上下変動の監視,数時間から数年かけて起こる地殻変動(標高変化)の精密な観測,超高精度な標高差計測・測位システムの確立など,光格子時計は将来の社会基盤となる可能性を秘めているという。

キーワード:

関連記事

  • 量子産業の未来図を描く

    量子への注目が世界的に高まるなか,トプティカフォトニクスのレーザーシステムが存在感を増している。日本での展開をさらに加速させているPresident and Chief Sales Officerのトーマス・レナー氏に,…

    2026.01.13
  • トプティカフォトニクス、オーストリアに商用光時計を納入

    独トプティカフォトニクスは、オーストリア連邦計量測量局(BEV)に対し、商用光時計の一つであるイッテルビウムイオン光時計「TOPTICLOCK」を納入した(ニュースリリース)。 このシステムは2025年9月29日にウィー…

    2025.12.26
  • 編集部が選ぶ2025年の「10大ニュース」 1位は「量子力学100周年」

    オプトロニクス社編集部が選ぶ2025年:光業界10大ニュース  激動の2025年もあとわずか。今年ほどニュースに事欠かない1年はなかった。国内では憲政史上初となる女性首相の誕生をはじめ、株価が5万円超え、コメ高騰、クマ被…

    2025.12.24
  • 【探訪記】NICTオープンハウス2025で見た,光技術の最前線

    情報通信研究機構(NICT)が主催する「NICTオープンハウス2025」が,6月20日から21日の2日間にわたり,東京都小金井市のNICT本部にて開催された。1日目がビジネス向け,2日目が学生・一般向けに開催され,取材班…

    2025.08.18
  • NTTら,格子状に配した原子が負の屈折を示すと発見

    日本電信電話(NTT)と英ランカスター大学は,大規模シミュレータを構築することで,格子状に配列した原子の協調応答が,光学迷彩や回折限界を超えるレンズなどの技術に繋がる「光の負の屈折現象」を引き起こすことを見出した(ニュー…

    2025.02.14
  • 東大ら,小型・堅牢な超高精度光格子時計を開発

    東京大学,理化学研究所,島津製作所,日本電子は,装置容量250リットルの小型・堅牢な超高精度光格子時計の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。 2020年に東京大学と島津製作所は,東京スカイツリーの地上階(0m…

    2024.11.21
  • 産総研ら,高稼働率の光格子時計で高精度時刻系生成

    産業技術総合研究所(産総研)と横浜国立大学は,光格子時計によって高精度な時刻系を230日間連続して生成することに成功した(ニュースリリース)。 光格子時計を用いて原子時計の周波数を調整し,精度が高く安定した時刻系を生成す…

    2024.06.10
  • 東大,光格子時計の高精度化に必須な連続原子源開発

    東京大学の研究グループは,レーザー冷却された原子を光ベルトコンベアで引き出し,さらに交差する光ベルトコンベアで運動方向を変えて出力する連続原子源を初めて開発した(ニュースリリース)。 レーザー冷却法は量子計測に欠かせない…

    2024.03.07

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア