産総研,加速度センサーの評価技術をレーザーで確立

産業技術総合研究所は,インフラの劣化診断に用いられる微小振動(1mm/s2程度)に対する加速度センサーの応答特性を正確に評価する技術を,世界で初めて確立した(ニュースリリース)。

インフラの劣化を早期かつ効率的に検知する劣化診断技術において,使用する加速度センサーの応答特性を正しく分かっていないと,誤った劣化診断をしてしまう可能性がある。そのため,加速度センサーの応答特性を正確に把握することが必要となる。

特に近年利用が拡大しているMEMS加速度計では,高精度なサーボ加速度計に比べて加わる振動の大きさへの依存性が大きく,微小振動の計測では誤差が生じやすい傾向にある。

そのため,計測対象と同程度の微小な振動を加えて特性を評価することが望ましいが,数十mm/s2以下の微小振動に対する加速度センサーの応答特性を正確に評価する技術は確立していなかった。

一般に加速度センサーの応答特性は,振動加振器で評価対象の加速度センサーを振動させ,そのときの加速度センサーの出力電圧信号と振動加速器の動きを測長するレーザー干渉計の出力信号(参照信号)を比較することで評価される。

二つの信号からそれぞれの振幅を算出し,比を計算することで応答感度を求めるが,地面の振動やレーザー干渉計の雑音が妨げとなり,参照信号の測定精度は10-2mm/s2から10-1mm/s2程度が限界で,約10mm/s2以下の振動に対しては正確な評価ができなかった。

そこで今回,振動応答評価装置の主な雑音源であった地面振動を抑えるために低周波防振台を導入したうえで,レーザー干渉計もホモダイン式からヘテロダイン式に変更し,評価装置起因の参照信号の雑音を低減した。

さらに,振幅の算出に独自の信号処理を用いることで,雑音の影響を最小限に抑え,参照信号の測定精度を大幅に向上することに成功した。これらの結果,インフラ診断で重要な0.1Hzから数十Hzの全帯域で,従来性能を大きく超える10-2mm/s2以下の精度で参照信号を測定できるシステムを開発した。

これにより,従来技術では評価が難しかった1mm/s2程度までの微小振動に対しても,参照信号を正確に測定し加速度センサーの応答を評価できる技術を実現した。検証の結果,従来技術では検知できなかった微小振動でも応答特性を正しく測定できることを実証した。

研究グループは今回開発した微小振動に対する応答特性評価に加えて,加速度センサーの周囲環境も実際の計測時に近くなるように温湿度を変えながら応答特性評価を行なう技術の開発を進めるとしている。

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