東大ら,磁化反転と超高速磁気光学効果を光で観察

東京大学と大阪大学の研究グループは,イプシロン酸化鉄および金属置換型イプシロン酸化鉄からなる磁性フィルムにおいて,ナノ秒可視光レーザー誘起の磁化反転と,テラヘルツ(THz)パルスレーザー照射による超高速磁気光学効果の観測に成功した(ニュースリリース)。

磁気記録技術の記録密度はその限界に達する中,光または電磁波でアシストする磁気記録が可能性のある解決策と考えられている。そのため,保磁力が大きく,サイズを8nm以下に小さくできるイプシロン酸化鉄(ε-Fe2O3)で光または電磁波でアシストする磁気記録が実現できれば,次世代の高密度磁気記録につながると期待されている。

研究グループは,ε-Fe2O3の鉄イオンの一部を三種類の金属イオン(ガリウムイオン,チタンイオン,コバルトイオン)で置換したε-Ga0.27Ti0.05Co0.07Fe1.61O3(GTC型イプシロン酸化鉄)を合成し,磁気テープに用いられる樹脂を用いて磁性フィルムを作製した。

このフィルムにおいて,磁化が反転しない程度の外部磁場を印加した状態で,ナノ秒可視光パルスレーザーを照射すると,磁化が反転することがファラデー効果を用いて観測された。この結果は,GTC型イプシロン酸化鉄の磁性フィルムで光アシスト磁化反転現象を実証したことを意味する。イプシロン酸化鉄フェライトにおける光アシスト磁化反転の観測は初めてだという。

イプシロン酸化鉄(ε-Fe2O3)についても同様に磁性フィルムを作製し,高強度のTHzパルス光を照射した。無磁場下で磁性フィルムにTHzパルス光を照射すると,THzパルス光に同期して瞬時に磁化が傾き,THzパルス光が通過すると同時に元に戻る様子が観測された。

磁化の応答はファラデー効果によりモニターされ,400フェムト秒という極めて短い時間で起こっていた。これらの超高速磁気光学効果の時間ダイナミクスは,理論的にもデモンストレーションされているという。

今回,研究グループは次世代高密度磁気テープ記録方式の可能性を示した。また,テラヘルツパルス超高速磁化応答は、1ピコ秒未満で書込/消失ができるため,これを用いると繰り返し周波数がテラヘルツである高速な演算が実現できる。照射するテラヘルツ光強度と位相をデジタル的に離散的に制御することにより,−2,−1,0,1,2といった,量子数(l)=2に相当する演算やn進法などの多進法の演算の実現も示唆するとしている。

キーワード:

関連記事

  • 東北大、三次元バルクメタマテリアルによるテラヘルツレンズを開発 

    東北大学の研究グループは、シリコン微粒子を樹脂中に分散させた三次元バルクメタマテリアルを用いて、レンズの形状を変えることなく焦点距離が制御できるテラヘルツレンズを開発した(ニュースリリース)。 テラヘルツ波は電波と光の中…

    2026.03.23
  • 東北大ら,テラヘルツで量子物質の巨大分極を誘発

    東北大学,東京科学大学,岡山大学は,電子強誘電体と呼ばれる量子物質の一種にテラヘルツ波を照射することで,バルク強誘電体としては過去最大の極めて大きな分極の変化を示すことを発見した(ニュースリリース)。 強誘電体はメモリや…

    2025.09.12
  • 新潟大,光透過性に優れた光酸素発生アノードを開発

    新潟大学の研究グループは,高効率・高安定性を有し,光透過性に優れたメソポーラス酸化タングステン(WO3)光酸素発生アノードの開発に成功した(ニュースリリース)。 エネルギー・環境に対する世界的な関心が高まる中,水素は将来…

    2025.08.26
  • 名大,安価で無毒なテラヘルツデバイスに知見

    名古屋大学の研究グループは,シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)というIV族元素のみで構成されるGeSn/GeSiSn二重障壁構造を超高品質に形成する新技術を開発し,テラヘルツ発振に必要な共鳴トンネルダイ…

    2025.08.22
  • 科学大ら,THzデバイスのチューニング機構を開発

    東京科学大学と広島大学は,マイクロアクチュエータを用いた機械チューニング技術によりテラヘルツ(THz)帯通信デバイスの性能改善に成功した(ニュースリリース)。 300GHz帯や150GHz帯といった高周波領域(テラヘルツ…

    2025.08.20

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア