1.はじめに
日本の道路トンネルは,平成24 年12 月の中央道笹子トンネルでの天井パネル崩落事故以降,5年に一度の点検が義務付けられており,国土交通省が定めた点検要領に従って維持管理が行われているが,その検査は主に手作業で行われている。一般的にコンクリートの寿命といわれる建設後50年を迎えるトンネルの割合は,令和5 年度時点で約1.2万箇所の内の27%であり,10年後には41%にも達する(図1(a))。加えて,建設業就業者の年齢は55歳以上の割合が36%,29歳以下の割合が11.8%であり全産業平均と比較してそれぞれ5%以上高齢化が進んでおり,検査員への負担は今以上に大きくなることが予想されている。点検作業では,検査員が「目で診る(目視検査)」,「触って診る(触診)」,「叩いて診る(打音検査)」ことにより,各部の劣化の進行具合・新たな劣化箇所を診断し必要な修繕を行う。特に打音検査は検査員が高所作業車上からコンクリート壁をハンマーで叩いた際に発生する音から目に見えない内部の状態を診断する検査法であるが,ハンマーで上方の壁を叩き続ける負担の大きい作業であるため,検査員の負担を軽減する新技術の導入が望まれている。現在,国土交通省では,新技術情報提供システムNETIS及び点検支援技術性能カタログの整備を進めており,性能試験・審査を経て登録された新技術の試験的な導入を自治体や検査を行なう建設コンサルタント会社に対して推進している。目視検査に関しては高精度カメラを用いた新技術が既に普及しているが,打音検査に関しては目に見えない内部を探傷する必要があるため,まだ試行段階に留まっている。
レーザー打音検査は,レーザーを用いて打音検査を遠隔・デジタル化する検査手法であり,西日本旅客鉄道㈱・(公財)鉄道総合技術研究所・(公財)レーザー技術総合研究所により提唱され,内閣府主導の戦略的イノベーションプログラム(第一期:平成26 ~ 30 年度,第2 期:平成30年度~令和4年度),第3期:令和5年度~現在)等を経て改良されてきた。打音検査の対象は,図1(b)に示すように,過去の点検で確認されたうき・はく離箇所,内部にうきや欠陥が生じやすい横断目地・打継ぎ目(トンネル建設時に生じるコンクリートの継ぎ目)やひび割れ箇所など多岐に渡るが,レーザー打音検査を事前に行うことで,検査員が打音する範囲を縮小することが可能となる。加えて,検査結果をデジタルデータとして保存可能であるため,現在政府が推進しているデジタル変革(DX)化のツールとしても期待されている。本稿で紹介するレーザー打音検査装置は,量子科学技術研究開発機構(以下,量研)と本装置の社会実装を担当する量研認定ベンチャー・フォトンラボが共同で開発し,点検支援技術性能カタログの非破壊検査トンネル(令和2 年:TN020003),非破壊検査橋梁(令和3 年:BR020016)に登録され,建設コンサルタント会社による点検業務への導入試験を開始している。本稿では,レーザー打音検査装置の原理・診断方法・現場への導入等について解説する。
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