月刊OPTRONICS 特集序文公開

IOWN構想の現在地―8本の各論から見る実用化へのカウントダウン

IOWN 構想と光技術を応用したネットワークの展望 著者:NTT ㈱ 渡辺真太郎

1.IOWN 構想とAPN

1.1 光技術で豊かな社会を作るためのIOWN構想

2019 年,ICTの進化で情報量爆発が言われるようになって久しい中,従来の情報通信の限界を超えるべくIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想(図1)が発表された。IOWN構想の根幹は光技術をベースとした情報伝送であり,これに電子技術による情報処理を融合させて光電融合型の処理,すなわちPEC(Photonics-Electronics Convergence)で持続可能な技術革新を目論む。

図1 IOWN 構想
図1 IOWN 構想

IOWN構想ではAPN(All-Photonics Network),DTC(Digital Twin Computing),CF(Cognitive Foundation)を主要な構成技術要素として,APNは端末からネットワークまで光技術を導入(光化)し,DTCはAPNでやり取りされた情報を活用して実世界とデジタル世界を掛け合わせて未来予測などを実現する。そしてCFはAPNにつながるモノ,アプリケーションやサービスの統合制御を実現し,IOWN構想を支える。

次節ではIOWN構想における情報通信基盤の要となるAPNにフォーカスし,そのポイントについて述べる。

1.2 APN による次世代情報通信基盤

APNは光技術によって光波長パスを提供する波長ネットワークを構成し,100 kmを超える長距離であってもエンド・ツー・エンドで従来の情報通信基盤と比較して低消費電力,高速・大容量,低遅延を実現する。

APNは2023 年に実用化が始まっており,バージョンアップを重ねて2030 年には低消費電力性では電力効率100倍,高速・大容量性では伝送容量125倍,低遅延性ではエンド・ツー・エンド遅延1/200 の実現を目指している。

このような利点を活かして次世代を見据えた情報通信基盤の構築も進めており,次章ではその具体事例として2025大阪・関西万博でのキャンパスネットワークについて紹介する。

2.2025大阪・関西万博におけるIOWNの実装

2.1 キャンパスネットワークとAPN

キャンパスネットワークは区切られた敷地や組織を対象としたネットワークサービスであり,ネットワーク全体を高度に管理・制御できる利点がある。このキャンパスネットワークとAPNサービスを接続することでキャンパスネットワークに光波長パスを提供することが可能となり,キャンパスネットワーク内やキャンパスネットワーク間のエンド・ツー・エンドにおいても低消費電力,高速・大容量,低遅延というAPNの利点を享受できるようになる。

2.2  2025 大阪・関西万博会場でのAPN によるキャンパスネットワーク

2025大阪・関西万博ではコンセプトとして「未来社会の実験場」を掲げており,夢洲の会場においてはその実験場実現の一端をIOWN構想の技術で担うためにAPNによるキャンパスネットワークを構築した。会場内のパビリオンや催事場の14か所をAPNサービスで接続し,加えて札幌,東京,大阪,神戸など会場外の拠点14か所の接続および海外(台湾)の拠点1か所も光海底ケーブルによる接続を行い,未来社会の実験として未来のコミュニケーション技術やリモート操作などIOWNのユースケースの動態展示を会場の随所で「powered by IOWN」として実施している。

3.ネットワークからコンピューティングへ

3.1 IOWN構想のロードマップ

前章まではIOWN構想におけるネットワーク(情報伝送)のトピックを中心に述べてきたが,本章ではIOWN構想の将来の方向性としてコンピューティング(情報処理)のトピックについて述べる。

IOWN構想ではPECの進化を踏まえ技術的な拡大のロードマップを次のように定義している。IOWN1.0ではAPNによるネットワークの光化(2023年~),IOWN2.0ではコンピューティングにおけるサーバ内のボード間の光化(2025年~),IOWN3.0ではボード上の演算チップ間の光化(2028年~),そしてIOWN4.0では演算チップ内の光化(2032年~)を目論む。つまりIOWN2.0以降はコンピューティングの領域にも光化を推し進める計画となっている(図2)。

図2 IOWN 構想ロードマップ
図2 IOWN 構想ロードマップ

3.2 IOWNによる新しい情報処理基盤

IOWN2.0以降はコンピューティングの領域にも光化を広げ,サーバ内のXPUやメモリなども光技術で接続することで,これまでにない情報処理の高効率化と低消費電力化を実現することを目指している。この情報処理基盤のアーキテクチャをDCI(Data-Centric Infrastructure)として定義(図3)し,より強力なコンピューティングリソースが必要となるこれからのAI時代において,高効率化と低消費電力化で環境性能をリードするDCIの技術開発を進めている。

図3 DCI のアーキテクチャ
図3 DCI のアーキテクチャ

4.まとめ

本稿ではIOWN構想とその構成技術要素であるAPNについて概要を示し,次世代情報通信基盤の具体事例として2025大阪・関西万博会場におけるAPNによるキャンパスネットワークを紹介した。そして将来の方向性としてコンピューティング領域におけるIOWNによる光化の目論見について述べた。

本稿で記したPECやAPNに関する技術やユースケースなどの詳細は後掲に譲るが,IOWN構想が必要とする技術のカバー範囲はネットワーク分野だけに限らず非常に広い。そのためIOWN構想の実現に向けてはそれに賛同する企業・団体を募り,IOWN Global Forumを組成して活動を推進している。その模様やホワイトペーパーなど各種情報についてはこちらのサイト(https://iowngf.org)を参照されたい。

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