理研,有機ケイ素化合物の省資源合成に成功

理化学研究所(理研)の研究チームは,「芳香族ケイ素化合物」を,単純な「有機ホウ素化合物」のみを触媒として効率的に合成する,新しい手法の開発に成功した(ニュースリリース)。この手法は金属やその他の添加剤を一切使用しない,環境にやさしい省資源型の反応だとしている。

芳香族ケイ素化合物は,有機エレクトロニクス,医薬品,材料合成などの分野で幅広く用いられる有用な化合物。芳香族ケイ素化合物は,主に遷移金属触媒を用いた芳香族化合物のケイ素化反応によって合成されている。

しかし,この手法による生成物には触媒に使用した金属が残る場合がある。特に有機エレクトロニクス材料や医薬品合成の分野では,生成物からの残留金属の除去がコスト面などで大きな問題となっている。そのため,金属触媒を用いない芳香族ケイ素化合物の効率的な合成手法の開発が求められていた。

研究チームはこれまで,金属触媒を用いた芳香族化合物のケイ素化反応について研究を進めてきた。その過程で,ベンゼン環にジアルキルアミノ基-NR2が結合した化合物類であるアニリン類のケイ素化反応を検討していたところ,金属を使わず,有機ホウ素化合物だけを触媒として用いてケイ素化反応が効率的に進行することを発見した。

この手法によって,さまざまな官能基を持つ有機ケイ素アニリン誘導体や,従来の金属触媒では合成が難しかった有機ケイ素化合物を簡便に合成できることが明らかになったという。

今後,環境にやさしい省資源型の効率的な有機ケイ素化合物の合成手法として,工業的な応用が期待できるとしている。

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