筑波大,iPS細胞誘導の中間体の作製に成功

筑波大学の研究グループは,独自に開発した方法を用いて,人工多能性幹細胞(iPS細胞)誘導が途中で一時的に停止した中間体の作製に成功した(ニュースリリース)。

iPS細胞は,非常に複雑な過程を経て誘導され,その過程で様々な遺伝子の発現が変化する。iPS細胞誘導には,初期化誘導遺伝子の発現バランスが重要であると言われているが,従来の誘導方法では,このバランスを自在に操作することができなかった。

研究グループは,独自のベクターシステム(SeVdpベクター)を用いて,初期化誘導遺伝子(Klf4,Oct4,Sox2,c-Myc)の発現バランスを操作できる系を開発し,Klf4遺伝子の発現量を減少させたときのみ,多能性が低い細胞のみが誘導されてくることを見出した。

詳細な解析の結果,これらの細胞では,iPS細胞誘導が途中で一時的に停止していることが明らかになった。さらに,Klf4遺伝子の発現量に応じて,iPS細胞誘導が様々な段階で一時的に停止した中間体が誘導されることも見出した。

このような中間体は,長期間培養しても性質が変化しない上に,Klf4遺伝子の発現量を上昇させることにより,iPS細胞誘導を再開させることもできる。

良質なiPS細胞を効率良く誘導することは,iPS細胞から作製された分化組織の安全性を高め,iPS細胞の再生医療への実用化を加速させることに繋がる。研究グループは,この研究で開発したiPS細胞誘導の中間体を用いると,これまで困難であったiPS細胞誘導過程の詳細な解析が可能になると期待している。

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