KDDI研ら,異なる光ネットワークの相互接続に成功

KDDI研究所(KDDI研),三菱電機,情報通信研究機構(NICT),慶應義塾大学,富士通,イクシアコミュニケーションズ,東陽テクニカの7者は,通信技術や管理手法など,アーキテクチャの異なる複数のネットワークドメインからなる全国規模の光トランスポートネットワークを構築し,SDN(Software Defined Networking)技術を用いて,これらネットワークドメインをまたがるシームレスな通信フローを動的に生成する相互接続実験に成功した(ニュースリリース)。

シームレスな通信サービスに対する需要が高まっているが,各国あるいは地域単位で構成されるネットワークは,通信事業者が地域事情に合わせ,異なるアーキテクチャ,およびテクノロジで構成している。これら複数のネットワークを一元的に集中制御することでネットワークをまたがった通信サービスを迅速に開通・提供することが可能となるが,膨大な処理・すべてのテクノロジに対する依存性を考慮しなければならないなど,実現は困難とされていた。

今回,全国に構築した異なるテクノロジのトランスポートネットワークを,新世代通信網テストベットJGN-X等を用いて接続した大規模トランスポートネットワークを構築し,各ネットワークドメインに配備したSDNコントローラが連携制御することで,複数のトランスポートネットワークドメインをまたがる通信フローを設定する相互接続実験に成功した。

研究グループは,4月20日~22日に開催される国際会議iPOP2015の公開デモンストレーションで,日本電信電話(NTT),沖縄オープンラボラトリ(OOL),及び広域ネットワークへのSDN適用を目指す研究開発「O3プロジェクト」と協力して,関東3拠点(小金井,武蔵野,大手町),及び沖縄1拠点(iPOP2015会場)に構築したトランスポートネットワークドメインと,国内広域に展開されているRISEテストベッドのネットワークドメイン(RISE沖縄,RISE関東),さらにはインターネット経由で米国拠点(ISOCORE)の計7拠点を接続したトランスポートネットワークを用意し,iPOP2015会場に設置したSDN/OpenFlowベースの制御装置からの遠隔制御により,関東の各拠点とiPOP2015会場を接続する複数の通信フローを設定できることをデモで示す。

NICT小金井を拠点とするトランスポートドメインは,SDN/OpenFlowベースの制御装置により制御されるマルチドメイン/マルチテクノロジのトランスポートネットワークとして,100ギガビット級DWDMトランスポートシステム(三菱電機提供)と,100ギガビット級光パケット・光パス統合ネットワークシステム0(NICT提供)で構築される大容量メトロコア光ネットワークと,エラスティック性を有する次世代光アグリゲーションネットワークのプロトタイプ機器(慶應大提供)と,広域ネットワークに対応する高速パケット転送を行なう仮想ノード(富士通提供)で構築された光アグリゲーションネットワークを構築し,iPOP2015会場に設置した統合制御装置(KDDI研提供)からの遠隔制御により,仮想光ネットワークを構築する。

NTT武蔵野を拠点とするトランスポートネットワークドメインは,スイッチ群を仮想資源として管理し,SDN/OpenFlowベースの制御装置からの指示に応じて,迅速に仮想網を構築する。同時に,ドメイン内コントローラが,網状況に応じてトランスポートパスの動的な経路最適化等のトラヒックエンジニアリングも実施する。

RISE沖縄拠点には,データセンタを模擬するための仮想マシン群が配備され,RISEテストベッドを通じて,関東拠点の仮想マシン群との間で,データセンタ間接続のトランスポートネットワークドメインを構成している。また,iPOP2015会場には,各トランスポートネットワークドメインを制御するSDN/OpenFlowベースの制御装置と,次世代光アグリゲーションプロトタイプ機器(慶應大提供)が配備され,関東各拠点に構築したトランスポートドメインと接続された広域のトランスポートネットワークドメインを構成している。

米国拠点には,ネットワークテスタが配備され,インターネット経由でNICT小金井拠点に対して背景トラヒックを提供している。

これらは,全国7拠点に構築したトランスポートネットワークを相互に接続した全国規模ネットワークのSDN/OpenFlow制御の初の公開デモンストレーションとなる。

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