─近年、メタマテリアルが改めて注目されています
かつて注目された透明マント、いわゆるクローキングは、メタマテリアルの原点のようなものです。夢のような機能が概念的には実現できるということで、多くの研究者がこの分野に入ってきました。ただし、透明マントを実現するのは難しい。そこで研究者は、メタマテリアルの現象を理解し、他にどのような機能が実現できるのかを模索してきました。そうした中で、さまざまな新規光学特性が学問的に明らかになってきました。
現在は、そこからさらに産業応用、社会実装のフェーズに入ってきています。その起爆剤の一つが、スマートフォンなどへのメタレンズの搭載です。顔認証などのセキュリティ技術や、LiDARのような測距技術にメタサーフェスが使われ始めたことで、グローバルな市場での応用が見えてきました。さらに、6Gを見据えたテラヘルツ波領域でも、メタサーフェスの技術が注目されています。これまでできなかった電磁波制御を可能にする技術として、企業も真剣に取り組み始めています。
─社会実装に向けた課題は
大学の技術と産業界の技術の間には、大きなギャップがあります。大学では、最先端の技術を使い、コストを度外視して新しい原理を実証します。一方、社会実装では、量産できること、品質保証ができること、均一に作れること、コストに見合うことが求められます。つまり、大学と企業では「作れる」という言葉の意味が違うのです。
私は、大学と企業の両方の立場を理解することが大切だと考えています。大学の立場にいながら、量産や社会実装に向けた視点も持つ。産業界の目線を身につけながら、大学の技術を俯瞰する。そこが重要だと思っています。
もう一つの壁は、言葉の壁です。大学の先生の話は難しくて、企業の方には分かりにくいことがあります。その難しい内容をうまく翻訳し、技術の本質を伝えることが必要です。大学の研究のエッセンスを、「社会実装に必要なかたちへと落とし込む」。その橋渡しが重要だと考えています。




