中央大など、半導体カーボンナノチューブで冷却不要の高感度赤外線センサを開発

中央大学と京都工芸繊維大学は、電気の性質が異なるp型およびn型に制御した半導体カーボンナノチューブ(CNT)を用いた高感度赤外線センサを開発した(ニュースリリース)。

(図)赤外線検出器の機構

赤外線は、衣服やプラスチックなど多くの有機材料を透過する性質を持ち、非破壊で内部の様子を調べるための重要な光。しかし、赤外線はエネルギーが低いため、高感度に検出するには冷却が必要な装置が多く、低コストで簡便に使えるセンサの開発が課題となっていた。

研究グループは、半導体型の単層カーボンナノチューブを高純度に分離し、さらに電気的性質の異なるp 型とn型にそれぞれ化学的に制御した薄膜を組み合わせることで、赤外線センサを作製した。赤外線がナノチューブに照射されると、電子の集団振動であるプラズモン共鳴が励起され、光エネルギーが効率よく熱に変換され、p型とn型の境界部分に温度差が生じる。この温度差は熱電変換により電圧として取り出され、赤外線の強さを電気信号として高感度に検出できる。

実験の結果、金属的性質のナノチューブが混在する従来材料を用いたセンサと比べて、今回開発した半導体ナノチューブのみからなるセンサは、約11倍高い感度を示すことが明らかになった。これは、半導体ナノチューブが熱を電気に変える能力に優れ、さらに赤外線を電子の集団振動によって強く吸収して効率よく温まるため。

加えて、化学的なドーピング処理によって熱が逃げにくくなり、より大きな温度差が生じることも示唆された。従来材料では、これら三つの性質を同時に制御するという発想がなく、今回初めてその同時最適化を実現したことが、高感度化につながった。

今回の研究では、半導体型カーボンナノチューブの高純度分離、熱電性能を最大限に引き出す薄膜形成、p型・n型ドーピング、さらにそれらの電気特性を長期間安定に保つ封止技術までを一体として確立した。その結果、赤外線吸収、温度上昇、熱電変換の各過程を切り分けて評価でき、感度向上の要因を定量的に議論することが可能になった。

さらにこのセンサを用いることで、パッケージ内部の金属物体の形状を赤外線で画像化できることも実証された。

(図)半導体カーボンナノチューブ赤外線センサによる非破壊透過イメージングの実証

研究グループは、この技術により、衣服やプラスチックを透過する赤外線を用いて内部構造を非破壊で観察できるため、セキュリティ検査、品質管理、医療診断、次世代通信分野など幅広い応用が期待されるとしている。

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