東北大,五酸化二窒素の作用機序を光る植物で解明

東北大学の研究グループは,細胞活動で重要なカルシウムイオン(Ca2+) のバイオセンサー(GCaMP)遺伝子を組み込んだ光るシロイヌナズナを用いて,N2O5(五酸化二窒素)ガスにさらされることで誘導されるCa2+シグナルを可視化することに成功した(ニュースリリース)。

研究グループはこれまでに,さまざまな植物に対してN2O5ガスを暴露することで,植物免疫を活性化すること,有用な二次代謝産物の合成を誘導すること,さらにはN2O5ガス自体が気体窒素肥料として機能することなどを明らかにしてきた。一方で,なぜこのような植物応答がN2O5ガスによって引き起こされるのか,そのメカニズムの多くは不明だった。

研究グループは,Ca2+のバイオセンサー(GCaMP)遺伝子を組み込んだ光るシロイヌナズナを用いて,N2O5ガスの暴露により誘導されるCa2+シグナルを可視化することに成功した。1枚の葉に対してN2O5 ガスを局所暴露したところ,暴露部位で10秒以内にCa2+シグナルが発生し,その後数分かけて全身に Ca2+シグナルが伝搬していくことが明らかとなった。

さらに,N2O5ガスに直接さらされてない葉において,防御関連遺伝子が有意に発現することがわかった。先行研究において,N2O5ガスの直接暴露がジャスモン酸ならびにエチレンを介したシグナル伝達経路を活性化し,植物に病害をもたらす灰色カビ病菌やキュウリモザイクウイルスの感染を抑制することを確認しているが,今回の成果により,局所的な処理であってもこのような免疫活性効果が得られる可能性を見出した。

また,植物の防御応答に深く関連するPDF1.2という遺伝子の発現を調べたところ,オゾン(O3)ガスや一酸化窒素(NO)/二酸化窒素(NO2)の混合ガスではほとんど発現が見られなかったのに対し,N2O5 ガスでは発現が顕著に見られた。この結果から,今回確認された全身性の防御応答は,N2O5特有の効果によるものであることが新たに明らかとなった。

研究グループは,これらの結果は,N2O5が引き起こす多様な有用効果のメカニズムの解明に寄与するだけでなく,新たなN2O5ガス処理方法の提案にも役立つと考えられるとしている。

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