京大ら,Ca2+とcAMPを感知する蛍光タンパク質開発

京都大学,理化学研究所,山梨大学,東京大学は,Ca2+を感知する赤色の蛍光タンパク質「RCaMP3」と,cAMPを感知する緑色の蛍光タンパク質「cAMPinG1」を開発した(ニュースリリース)。

Ca2+(カルシウムイオン)とcAMP(3′-5′-アデノシン一リン酸)は,多くの生物の細胞内で情報伝達を担う重要な分子。互いに影響しながら時々刻々と細胞内濃度が制御されることで,細胞は役割を果たす。

しかし,生きた動物のCa2+とcAMPの動態を,同時に高精度に観察する技術がこれまで不十分であったため,Ca2+とcAMPの間の関係性を精確に調べることはできなかった。

そこで研究グループは,高感度の緑色蛍光cAMPセンサーと赤色蛍光Ca2+センサーを開発し,同時に観察することで,関係性を明らかにすることを目的とし,Ca2+を感知する赤色の蛍光タンパク質「RCaMP3」と,cAMPを感知する緑色の蛍光タンパク質「cAMPinG1」を開発した。

RCaMP3やcAMPinG1はそれぞれ,Ca2+やcAMPと結合すると,その蛍光が明るくなる。このcAMPinG1とRCaMP3のアミノ酸配列情報を搭載したAAV(アデノ随伴ウイルス)を,マウスの大脳皮質視覚野に局所投与し,神経細胞に感染させることで,cAMPinG1とRCaMP3を神経細胞に発現させた。

その大脳皮質直上の頭蓋骨を手術で除去し,代わりにガラス窓を取り付けた。マウスの頭部を蛍光顕微鏡の対物レンズ直下に固定することで,ガラス窓越しに神経細胞が発現するcAMPinG1とRCaMP3の蛍光を顕微鏡で観察した。

この手法により,cAMP濃度を示す緑色蛍光とCa濃度を示す赤色蛍光の両方を観察することに世界で初めて成功した。また,マウスを強制的に走らせると,ノルアドレナリン放出とアドレナリン受容体の活性化によるcAMP上昇を示す細胞が観察された。

以上より,神経細胞において,発火とCa2+シグナルが持つ情報と,GPCRシグナルが持つ情報は,cAMP シグナルとして統合され,数十秒の単位で細胞内に記憶されることを世界で初めて観察することに成功した。

研究グループは,この成果は,精神・神経疾患の病態解明および治療法の開発につながるものとしている。

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