九州大ら,ダイズ油の明所臭に関わる遺伝子を特定

九州大学と佐賀大学は,油脂中にフラン酸をほとんど含まないダイズ突然変異体を見出し,これを用いて,油脂中のフラン酸合成に関わる遺伝子を特定することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

ダイズ油脂は世界で2番目に多く消費されている植物油脂だが,古くダイズ油脂独特の問題として,光にあたると枯れ草様の不快臭(明所臭)が発生することが知られていた。

この原因となっているのは,油脂中にごく微量(総脂肪酸の0.05〜0.1%程度)含まれているフラン酸と呼ばれる特殊な環構造を持つ脂肪酸であり,この物質が光によって分解すると3-メチル-2,4-ノナンジオンが生成され,明所臭となることが明らかになっていた。

そこで,研究グループはこのフラン酸を合成しないダイズが作成できれば,この問題が解決し,ダイズ油脂(およびダイズ製品)の用途拡大が可能となると考えて,この研究を行なった。

当初,研究グループは入手可能な数百のダイズ品種について,フラン酸の少ない品種の探索を行なったが,フラン酸含量の少ないダイズ品種は見つからなかった。その後,ダイズ突然変異体リソースを使って探索したところ,フラン酸含量が著しく(最大で通常の品種の10分の1以下)減少した4系統の突然変異体を得ることができた。

そこで,これらの突然変異体を用いて,遺伝解析を行ない,2個の原因の遺伝子(Glyma.04G054100と Glyma.20G201400)を同定することに成功した。また,この研究で得られた低フラン酸突然変異系統からダイズ油脂を調製し,油脂の酸化安定性と不快臭の発生について評価を行なったところ,標準的なダイズ品種であるフクユタカから調製したダイズ油脂と比べて,酸化安定性が高く不快臭の発生も抑制されていることが明らかになった。

研究グループは以前の研究で,ダイズ油脂のオレイン酸含量を増加させ多価不飽和脂肪酸の含量を減少させることにより,明所臭以外の2つの不快臭の発生を抑制できることが明らかにし,この技術を用いたダイズ品種も実用化している。

この技術と今回の研究の結果を組み合わせることで,ダイズ油脂由来の主要な不快臭の発生を抑制する技術が完成し,ダイズ新品種の開発が見込まれる。研究グループは,このことは,ダイズ油脂の品質劣化のみならずダイズを原料とする様々な食品(豆乳や代替肉等)の品質や品質保持期間の改善等にも貢献することが期待されるとしている。

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