名大ら,安価でエコな負熱膨張材料を微粒子化

著者: sugi

名古屋大学と同大発ベンチャーでセラミック微粒子のミサリオは,環境にやさしく,温めると縮む新材料「ピロリン酸亜鉛マグネシウム」の微粒子化に成功した(ニュースリリース)。

温度が上がると体積が小さくなる「負熱膨張材料」として,β-ユークリプタイト(LiAlSiO4)やタングステン酸ジルコニウム(ZrW2O8)などの酸化物が知られ,これまでは,特に安価で環境にもやさしいβ-ユークリプタイトが実用されてきた。

熱膨張制御の強い要求を背景に,近年ではこれら従来材料の数倍から十倍を超える巨大な負熱膨張が実現されている。しかし,これらの巨大負熱膨張材料は,高価な(Ru,Sc),あるいは環境に有害な(Pb)元素を含むことや,合成にコストのかかる高圧力が必要など実用上の課題が多く,広く社会実装されるには至っていなかった。

研究グループ2021年11月に,これら巨大負熱膨張材料の抱えていた様々な課題を根本的に解決する,高性能かつ低コストで環境にやさしい新材料を発見した。今回,この材料のより広い産業利用を可能とするため,ミサリオと共同で,性能を保ったまま微粒子化を実現した。この微粒子は,1μmレベルの熱膨張抑制剤としては世界最高水準の性能だという。

熱膨張の制御は,プロセス,計測,光学,電子デバイス,航空宇宙など,今や産業のあらゆる分野で求められている。熱膨張を示す通常の材料に,開発された材料を混ぜることにより,熱膨張の制御が求められるあらゆるニーズに応えることができる。

とりわけ,微細化,複雑化が進む電子デバイス分野では,構成する異種材料間の熱膨張差が深刻な問題となっている。それらを克服するためには樹脂フィルム,接着剤,基板等といった微小な部材の熱膨張制御が不可欠とされているが,それらの実現には熱膨張抑制剤をサブミクロンから1μm程度に微粒子化することが必要だった。

研究グループは,この材料により,パワー半導体や3次元集積回路素子をはじめとした,先端電子デバイスの高機能化・省電力化・長寿命化に貢献できるとする。

なお,開発された微粒子は,2023年2月1 日より東京ビッグサイトで開催される「nanotech2023」において展示・発表され,ミサリオを通じて,PyroAdjuster(パイロアジャスター)の商品名で,粒径1μm程度のミクロンクラスの量産品から試験供給される。さらに,粒径が1μmより小さいサブミクロンクラスの供給も視野に入っているとしている。

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