東工大ら,9.3%の体積収縮を示す巨大負熱膨張物質

東京工業大学,量子科学技術研究開発機構,大阪公立大学は,昇温することでこれまでで最大の9.3%の体積収縮を示す巨大負熱膨張物質Pb0.8Bi0.1Sr0.1VO3を開発した(ニュースリリース)。

これまで最大の体積収縮を示す物質は,同グループが見つけたペロブスカイト構造の鉛(Pb),ビスマス(Bi),バナジウム(V),酸素(O)からなる酸化物Pb0.8Bi0.2VO3で,400Kから800Kの昇温で7.9%の体積収縮が観測されていた。

ベースとなる物質のPbVO3は代表的な強誘電体であるPbTiO3と同じ極性の正方晶構造を持ち,室温で圧力を加えると10.6%の体積減少を伴って非極性の立方晶相へ転移するが,常圧下で昇温すると分解してしまい,負熱膨張は示さない。

PbをBiで置換すると,常圧での昇温によって立方晶相へ転移する負熱膨張を示すようになるが,Pb0.8Bi0.2VO3の低温正方晶相の体積がPbVO3より小さいため,温度上昇による体積収縮は10.6%ではなく,7.9%に減少してしまう。

体積の大きな低温正方晶相と体積の小さな高温立方晶相が相分率を変えながら共存するため,平均の体積は連続的に減少する。これら2相が作る材料組織を最適化することで負熱膨張が起こる温度範囲を制御できると期待されるが,2相がどのように空間的に分布しているかは不明だった。

今回,PbVO3のPbをBiではなくストロンチウム(Sr)で置換すると,正方晶の体積が減少しないまま立方晶相と2相共存するようになること,また,温度を変えても2相共存状態が変化せず,正方晶や立方晶単相に変化しないため,安定に取り出せることを見いだした。

そこでPb0.82Sr0.18VO3に対して走査透過電子顕微鏡観察を行ない,正方晶と立方晶の接合界面を原子スケールで観察することに成功した。さらに,大型放射光施設 SPring-8でブラッグコヒーレントX線回折イメージングを行ない,1つの結晶粒の中の正方晶相,立方晶相の空間的な分布を明らかにした。

また,立方晶を出現させる効果を持つSrに加えて,温度変化による相変化を促す効果を持つBiでもPbを置換することで,PbVO3が本来持つ大きな体積変化を保ったままで負熱膨張を起こすことに成功し,SPring-での放射光X線回折実験で調べた微視的な格子定数の変化から,Pb0.8Bi0.1Sr0.1VO3では低温正方晶相と高温立方晶相の体積差が11.1%もあり,450Kから700Kへの昇温で,これまでで最大となる9.3%もの体積収縮を示すことを確認した。

今回開発したPb0.8Bi0.1Sr0.1VO3は,温度履歴が大きいという問題を持つが,研究グループは,正方晶相,立方晶相が共存する材料組織を最適化することで解決できるとしている。

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