NEC,つながりやすい光ファイバー無線システムを開発

NECは,高層ビル・地下街・工場などにおいて,無線がつながりにくい場所でも,高速で安定した無線通信を可能にする光ファイバー無線システムを開発した(ニュースリリース)。

近年,モバイルインターネットの普及に伴い,高層ビルや地下街など,いつでもどこでも安定して使える無線通信へのニーズが高まっている。また,IoTによる生産革新の進展により,金属物が多い工場など電波が届きにくい場所では,通信の速度低下や不安定な状況が発生するため,通信品質の改善が求められている。

通信品質の改善には,構内に携帯電話の基地局や無線LANのアクセスポイントを増設するのが有効だが,場所の制約により設置が困難であったり,電波干渉により通信速度が低下するといった課題があった。開発したシステムは,アンテナ部の小型化や,制御部側で周波数や無線方式を動的に選択・変更し、高速・安定な通信を実現するもの。

開発したシステムは,光ファイバー無線システムのアンテナ部と本体(制御部)において,高周波の無線アナログ信号を大きく劣化することなく,直接1ビットのデジタル信号系列に変換する位相同期型デジタル技術を適用した。

これにより,デジタル信号を装置本体から光ファイバーで伝送することで,アナログデジタル変換や周波数変換が不要となり,従来比約1/5とアンテナ部をカードサイズに小型・薄型化した。また,装置本体とアンテナ部は最大数km離して設置でき,高層ビルや地下街,大規模な工場にも適用できる。

また,アンテナ部で周波数変換器が必要ない為,アンテナ部の交換なしに,装置本体側から周波数や無線通信方式(LTE,無線LANなど)がソフトウェアの更新のみで変更できる。
 
これにより,工場などで頻繁にあるレイアウト変更時にも,アンテナ部が設置される環境に応じて,最適な周波数や無線通信方式を装置本体側で簡単に集中制御して変更可能となり,電波の不感地帯や干渉が回避されることで,安定した通信品質を実現する。

また,今回NECは,このシステムを用いて,無線規格として2.14GHz帯のLTEを用いた伝送実験を行ない,18kmの光ファイバ伝送後も信号劣化なく,長距離伝送が可能なことを実証した。