京大ら,座布団型分子でペロブスカイト太陽電池を高効率化

京都大学と大阪大学,米国ボストンカレッジとの共同研究として,独自に設計した座布団型構造をもつ革新的な有機半導体材料を開発し,これをp型バッファ層に用いることでペロブスカイト太陽電池の光電変換効率を著しく向上させることに成功した(ニュースリリース)。

ペロブスカイト太陽電池は,材料を基板やフィルムに塗る「印刷技術」により作製でき,従来の太陽電池に比べて製造コストを大幅に下げることが可能な新たな太陽電池として世界中で急速に注目を集めている。2012年以降,その光電変換効率は驚異的な速さで向上し,実用化への期待も高まっている。

「ペロブスカイト太陽電池」は,CH3NH3PbI3 などのハライ ド系ペロブスカイト半導体の光吸収層をp型およびn型の半導体のバッファ層で挟んだ構造となっている。発電原理としては,ペロブスカイト層で太陽光を吸収することにより電荷(正孔と電子)が生成し,これらがp型およびn型のバッファ層を介して選択的に各電極に回収されることにより発電する。

これまでは,主に,光吸収材料であるペロブスカイト層の作製法の改良により,光電変換効率が向上してきた。その一方で,ペロブスカイト層で生成した電荷(正孔と電子)を選択的に取り出し各電極へ運ぶための半導体材料については,国内外で活発に開発研究が行なわれているにもかかわらず,従来の材料を凌駕する性能を示す材料がほとんどなく,製造コストが極めて高いSpiro-OMeTADという有機半導体材料が標準材料として用いられている状況にあった。

そのため,製造コストが安く,より優れた特性を示す有機半導体材料をいかに開発できるかが,この太陽電池の実用化への重要課題の一つとなっていた。

この研究では,分子が「座布団型構造」をもつように二次元的に骨格を拡張した有機半導体材料を設計・開発した。具体的には,同研究グループがこれまでに高い正孔輸送特性を発現する骨格として独自に開発してきた「準平面構造をもつ骨格」(HND)を,アズレン骨格のまわりに4つ導入したHND-Azuleneを開発した。

この材料を用いてペロブスカイト太陽電池を作製したところ,従来材料(Spiro-OMeTAD)の光電変換効率13.6%に比べて1.2倍も効率が向上することを見出し,16.5%の光電変換効率を得ることに成功した。

この成果により,安価で優れた特性を示す有機半導体材料の開発に道が拓かれ,ペロブスカイト太陽電池の実用化が加速するものと期待できるとしている。

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