早大ら,任意の偏光を持つテラヘルツ光の解析に成功

早稲田大学,宇都宮大学,埼玉医科大学,三次元工学会,アリゾナ大学による共同研究グループは,任意の偏光をもつテラヘルツ光の偏光状態をスナップショットで解析する手法を開発した(ニュースリリース)。

テラヘルツ光の偏光を調べるためには複雑な光学系を必要とすることが多く,ベクトルビームに焦点を当てた研究が活発に行なわれているテラヘルツ光でも,超短パルスレーザーをプローブ光として測定する必要があった。研究グループは,テラヘルツアクロマティック軸対称波長板(TAS plate)とテラヘルツ検光子で,透過後のテラヘルツ光の光強度分布をパイロカメラによって1枚撮像するだけで,テラヘルツ光の偏光を決める手法を実証した。

研究では,テラヘルツ検光子の角度方向に対するテラヘルツ強度分布を複数枚測定し,フーリエ変換することにより,入射偏光のストークスパラメータを全て算出した。このストークスパラメータを用いてテラヘルツの強度分布を再計算することにより,未知の入射偏光だけでなく,TAS plate透過後のベクトルビームの偏光状態も解析できることを示した。

さらに,TAS plateを用いると,検出するだけでなく,逆に発生に使うこともでき,テラヘルツ光ベクトルビームの生成にも適用できることを示した。これは,任意の偏光をもつテラヘルツ光の偏光を解析する革新的な手法が開発されたことになる。

今回の成果は,テラヘルツ波の偏光を制御するために必要な計測系ができたことを意味する。研究グループは今後,この手法でテラヘルツ光の電場の向きをモニターしながらテラヘルツ光の偏光を設計することによって,物性科学,情報通信,生体計測,天文学,セキュリティーなどのテラヘルツ光に関する分野への貢献を期待している。

例えば,偏光状態がよく制御されたテラヘルツ光により,分子振動や物質の構造骨格などを解析する物性科学などに寄与することになり,将来的にはレーザ加工機や高密度記録媒体,顕微分光分析装置の開発を目指した応用発展も期待されるという。また,この偏光解析法は,テラヘルツ光のみならず,遠赤外線から可視光,X線にいたる電磁波全般にも今後活用されるものと期待されるとしている。

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