東北大,二種類の低次元磁気格子から三次元格子からなる分子磁石の設計に成功

東北大学は,鎖状と層状の二種類の低次元磁気格子からなる分子磁性体(分子磁石)を構造的に組み合わせることにより,それぞれの構成格子の構造と磁気的な特徴を併せ持つ新しい三次元格子からなる分子磁石を設計することに成功した(ニュースリリース)。

この物質では,類似の構成部位をもつ層状構造をもつ磁性体とπスタック型カラム状構造をもつ磁性鎖を選択することにより,両者の構造的な特徴である二次元層とπスタック鎖(柱)を組み合わせた“πスタック型ピラードレイヤー構造”を溶液内で自己組織的に集積させ,層内の磁気秩序と層間の磁気秩序を一義的に制御する方法論を提案している。実際に,この方法で,磁気相転移温度7TC=82Kの分子磁石をつくることに成功した。

この研究の結果は,2種類の低次元磁気格子を組み合わせて磁石を設計する新たな方法論を示しているだけでなく,電荷移動型錯体による高相転移温度磁石の開発に道筋をつけたもの。また,この設計法は,分子の持つ多様な機能性を組み合わせて磁性体を作ることも可能にしており,多機能性磁性体の開発という点でも今後興味が持たれるとしている。

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