名大ら,抗CTLA-4阻害抗体を用いた腫瘍免疫療法に併発する二次性下垂体炎の発症機序を解明

名古屋⼤学総合保健体育科学センター特任講師の岩間信太郎氏,⽶国ジョンズ・ホプキンス⼤学准教授のPatrizio Caturegli氏らの共同グループは,抗細胞傷害性T細胞抗原4(CTLA-4)抗体を用いた腫瘍免疫療法に併発する二次性下垂体炎の発症機序を解明した。

下垂体の炎症性疾患である下垂体炎は従来稀な疾患と考えられてきたが,近年開発された進行悪性腫瘍に対する免疫療法薬の抗CTLA-4抗体を用いた治療に伴う副作用として高率(平均4%)に発症することが報告され,その臨床的重症性が注目されている。

下垂体炎は下垂体機能低下症を呈するため,ホルモン補充療法が永続的に必要となることが多く,診断が遅れた場合は死に至る可能性もある重篤な疾患である。一方,この二次性下垂体炎の発症機序は全く不明であった。

研究では,ヒトで用いられる抗CTLA-4抗体と同等の抗体をマウスに投与することで二次性下垂体炎モデルマウスの作成に成功した。また,活性化 T 細胞や制御性 T 細胞での発現が知られている CTLA-4 が下垂体の甲状腺刺激ホルモン産生細胞およびプロラクチン産生細胞の一部において発現していることを初めて明らかにした。

この知見をもとにモデルマウスの解析を進め,投与された抗 CTLA-4 抗体は直接下垂体の CTLA-4 に結合して補体を活性化し,Ⅱ型アレルギー反応を介して下垂体に炎症を惹起するという発症機序を解明した。

さらに,抗 CTLA-4 抗体治療による二次性下垂体炎患者血清において,検討した全例で抗下垂体抗体が治療後に陽性化したことを見出した。この結果は、Ⅱ型アレルギー反応を軽減できる新たな抗 CTLA-4 抗体の開発による二次性下垂体炎の新規予防法および抗下垂体抗体の評価による早期診断法の確立につながる可能性があり,臨床的に非常に重要な知見となっている。

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