月刊OPTRONICS 特集序文公開

半導体レーザとホットワイヤ法によるステンレス鋼とアルミニウム合金との異材積層造形

1.はじめに

金属材料の積層造形(Additive Manufacturing,AM)技術は,粉体やワイヤなどの材料をレーザ,電子ビーム,アークなどの熱源を用いて造形するものであり,形状自由度の高い製品の製造が可能である。また,異なる材料を適宜使用することで,それぞれの箇所に異なる特性を有する製品の造形も可能となるため,高付加価値製品を対象としたAM技術の適用や研究が多くなされている。図1 に,代表的なAM手法とそれぞれの一般的な特徴を示す。一般的に,粉体材料を使用する場合の造形精度は高く造形能率は低い。一方で,ワイヤ材料を使用する場合の造形精度は低く造形能率は高い。

本研究で検討している半導体レーザとホットワイヤ法によるAM技術は,図1 中のレーザワイヤDEDと呼ばれる手法の一つである。ホットワイヤ法は,レーザなどの主熱源によらず供給するワイヤ材料を通電加熱のみによって融点近傍まで加熱することができ,入熱の上昇を抑制しつつ造形能率を大幅に向上させることができる。主熱源に用いる半導体レーザは,スポット形状等を比較的容易に変化させることができ,基材等への入熱分布制御性も良く,希釈を大幅に低減させることも可能になる。

本研究において基材として供試するオーステナイト系ステンレス鋼は,耐食性,低温靭性,高温強度などに優れている。一方,積層造形材料として供試するアルミニウム合金は,軽量,熱伝導性,電気伝導性などに優れており,この2 種類の材料を接合しそれぞれの特性を活かそうとするマルチマテリアル化に関する研究は数多く行われている。しかしながら,これら2 つの材料を接合する際には接合界面に硬くて脆い金属間化合物(IMC)が生じ,IMCが厚く生成した場合には接合強度が低下する。

したがって,これら二つの材料での高い接合強度を実現するためには,IMCの生成を抑制するための温度場(入熱)制御が重要となる。また,材料表面の酸化被膜は安定した接合を妨げるため,酸化被膜除去への対策も必要となる。そのため,ろう付等でフラックスが広く用いられている。フラックスは化学的に酸化膜を破壊することによって異材同士の接合を助ける働きをする。

本研究では,上述のように,それぞれ異なる特徴を有するオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)基材上に,アルミニウム合金(A5183)を積層造形する異材AM技術を検討した。主熱源として高出力半導体レーザを用いホットワイヤ法と組み合わせることで,IMCの生成を抑制し高い界面強度を有する積層体の造形を試みた。また,2 種類のフラックス供給方法を検討し,各種造形条件が異材接合状態に与える影響を調査し,強度評価を実施した内容について紹介する。

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