1.はじめに
付加製造(以下AM)いわゆる3Dプリンティングのブームが起こってからすでに10 年以上が経過した。当初,今まで工場での生産が各家庭におけるオンデマンド製造にかわるとまで言われていたが,現状のAMは,金属では航空宇宙分野,医療分野,宝飾分野の製品においてシリーズプロダクションにおいてある一定の市場が確立されつつあるものの,一般的な金属部品への展開の例は多くない。また,樹脂のAMではスニーカーのアウトソールや歯科矯正具のモールドなど,AMの複雑な形状を加工できる特性や樹脂製造に金型を必要としない特徴を活かした新たな製品の製造に活用されてきたが,活用の大半は試作品の製造にある。
プラスチック部品の製造に金型を必要としないことは,樹脂のAMの最大の長所であるが,生産性,精度,コスト,利用可能な材料が限定されること等から,従来の射出成形による実部品の生産がAMに置き換わるには至っていない。一方,自動車など10年以上の長期にわたって使用される製品のプラスチック保守部品のオンデマンド生産は,同一部品の工法の置き換えにあたり難易度は極めて高いが,大量の部品を短期間に供給することから,少量の部品を長期にわたって供給するという生産モードの変化に対応するため,AMの活用分野として当初より期待されていた。令和2年度より2年間にわたって行われた,「デジタルスペアのための設計・製造・運用技術に関する戦略策定」においては,AM技術の性能向上などの技術革新に加えて,工法にあわせた設計,品質保証基準など生産にかかわる全体的な施策の提案がなされた。本稿では,提言の一つであるAMの生産性の向上,特に実部品生産の工法としてもっとも期待されているレーザー焼結の高速化について解説する。
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