月刊OPTRONICS 特集序文公開

次世代赤外線検知器に関して

著者:富士通 角田浩司

1.防衛分野における赤外線センシングの意義

防衛分野においては,「相手より先に検知し,状況を正確に把握する」ことが戦略・戦術の両面で重要となる。近年では,小型無人機(ドローン)やステルス性の高い飛翔体,さらには極超音速滑空弾(HGV)といった新たな脅威が急速に台頭しており1, 2),それらを検知するセンシング技術にもさらなる高度化が求められている。このような状況において,波長が3~14 μmのいわゆる熱赤外線を検知する赤外線センシングは,受動的かつ高感度な熱源の検知手段としてその重要性が一層高まっている3)

赤外線センシングの最大の特徴は,対象物自身の熱(温度)に起因する自発的な輻射を利用する点にある。可視光のセンサーが太陽光や照明などの外部光源に依存するのに対し,赤外線センサーは照明が不要であり,昼夜を問わず安定した監視が可能である。また,レーダーのように電波を発信するアクティブセンサーとは異なり受動型であるため,観測行為自体が相手に検知されにくい。この秘匿性は,防衛用途において極めて重要な特性である。さらに,赤外線は可視光よりも波長が長く,大気中の散乱の影響を受けにくいという利点を有する3)。このため,煙,霧,薄雲などの条件下でも比較的安定した観測が可能である。なお,波長が長すぎないことも画素サイズや光学系との関係において重要であり,適切な設計により実用的なサイズで高精細な画素アレイやセンサーシステムを実現できる。防衛分野における赤外線センシングの特長を図1に示す。

図1 赤外線センシングの特長

赤外線センサーはその検出原理に基づき,大きく熱型と量子型に分類される3)。熱型センサーは入射した赤外線による温度変化を検出する方式であり,常温動作が可能で構造も比較的簡便である。一方,量子型センサーは半導体中のキャリアの励起といった量子力学的過程を利用して赤外線を検出する方式であり,高い感度や高速な応答性を有するという特徴を持つが,性能を発揮するには熱によるノイズを低減する必要があり,低温に冷却しての使用が一般的である。防衛用途においては単なる検知だけでなく,「より遠距離で」「より小さな対象を」「より短時間で」検出する能力が求められる。特に高速で移動する対象に対しては検知の遅延が許容されないため,高速な応答性を有したセンサーが不可欠である。このような背景を踏まえ,次節以降では量子型赤外線センサーに焦点を当ててその進展と課題について述べる。

【月刊OPTRONICS掲載記事】続きを読みたい方は下記のリンクより月刊誌をご購入ください。

本号の購入はこちら

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア